多くの火種を抱える中国は株式市場へのショックにつながるか?

2021/09/17

今週の国内株市場ですが、日経平均は14日(火)の取引で2月の高値を更新し、199081日以来、約31年ぶりの株価水準をつけるなど、3万円台をキープする動きが続けています。

その一方で、中国をめぐってネガティブな報道が目立つようにもなってきました。今週に入ってからも、不動産開発大手、中国恒大集団の債務を巡る問題をはじめ、EU(欧州連合)が近くまとめる「インド太平洋協力戦略」で、台湾との関係強化の方針を打ち出す姿勢を示したり、また、すでに不安視されている中国当局による各業界への「締め付け」についても、IT大手企業のプラットフォーマーや教育、芸能界に加え、足元ではカジノ運営会社の規制に乗り出すなど、対象分野が拡大しています。日本株市場はまだこうした報道をきっかけに売り込まれる展開にはなっていませんが、さすがにここまで報道が相次ぐと、注意しておいた方が良いかもしれません。

そもそも、最近の中国当局による締め付けは、計画的だった節があります。ITプラットフォーマーに対しては、昨年12月の中央経済工作会議で、過度な独占を禁止する方針が打ち出されており、教育や芸能界、ゲーム業界、不動産業界に対しては、今年3月に開催された全人代(全国人民代表大会)で目標に盛り込まれた、いわゆる「共同富裕」の理念に沿うかたちで、経済や教育の格差や、住宅価格高騰といった問題に対処したと言えます。習近平氏は、来年(2022年)に開かれる中国共産党の党大会で、「210年」というこれまでの主席の任期期間の原則を廃して、3期目の実現を目指しており、そのための地ならしの面もあります。

ただ、こうした一連の動きが、国内外で社会主義的な方針転換による「文化大革命2.0」の再来を警戒する見方や、想定以上の経済への悪影響など、中国当局が意図せざる方向に向かってしまっている可能性が高まってきました。

もっとも、8月に「個人情報保護法」が成立し、すでに成立・施行されている「インターネット安全法」や「データ安全法」と併せて、データ関連の法整備が整ったことや、来年2月の北京冬季五輪が迫る中での対外アピールもあり、中国当局の締め付けはひとまず落ち着くと思われますが、結果的に多くの火種を残す状況となっていましました。少なくとも、従来はイコール(=)だった「国家・民衆」と「共産党」の利益の関係性に変化が出始めていると思われます。

目先は、中国恒大集団の債務を巡る対応が焦点となりそうです。2週間後の101日には中国の国慶節(建国記念日)が控えているため、それまでに、何らかの対処が行われる可能性が高く、対応の内容次第では、国内外の株式市場が荒れる展開になるかもしれないことは、一応留意しておいた方が良いかもしれません。

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