最高値圏の米株市場の「潮目」は近いか?

2021/08/20

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、28,000円台を下回る推移が続いています。相場は崩れていないものの、浮上のきっかけをなかなか掴めない印象となっています。新型コロナウイルスの変異株の感染拡大による景気の先行き警戒感や、決算シーズンが一巡したことによる手掛かり不足などが足枷になっている格好です。

その一方で、視点を米国株市場に向けると、主要株価指数(NYダウ・S&P500NASDAQ)が揃って最高値圏での推移が続いています。

ここ数週間の米株市場の環境を振り返ると、バイデン政権のインフラ投資計画の前進による景気支援期待や、米7月消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、過度なインフレ懸念が後退したこと、小売り企業決算への期待などが好材料になったかと思えば、米国の経済指標で冴えないものが増え始めたり、経済急回復の一服感や新型コロナの影響が意識され始めたり、中国の景気減速や、タリバンが国土を制圧したアフガニスタン情勢などの地政学的リスクの高まりなどの悪材料も併存しています。

こうして見ると、株価がもう少し上下に動いてもおかしくはなさそうなのですが、実際にチャートを眺めてみると、目立った株価の「調整」も「爆上げ」もないまま上昇基調を描いています。日々の株価の上げ下げは材料を織り込んでいるというよりは、バリュー株とグロース株などの循環物色の口実となっている面があり、「多少の材料にもブレない堅調な相場」と見ることができる一方、「楽観ムード先行でリスクに無関心な相場」という見方もできます。

また、材料に鈍感な相場は、いずれやって来る調整局面のサインが読みにくいという厄介さもはらんでいると考えることもできます。米FRB(連邦準備理事会)が早期にテーパリング(量的緩和の縮小)に動くとの見方は、今後の経済指標の動向などに左右されますし、先ほどのアフガニスタン情勢についても、バイデン政権への批判に繋がってしまうと、今後の経済法案の議会通過や来年の中間選挙にも影響が出かねません。現時点で過度に不安視する必要はなさそうですが、無視することもできない材料と言えます。

また、新型コロナについても、米国では州によって対応がまちまちです。例えば公共の場でのマスク着用について、10州がマスク着用を義務付ける一方、8州は義務付けを禁止する条例を導入するなど、対応が分かれています。前者の10州の知事は民主党で、後者の8州は共和党の知事のため、政党間の対立を含め、今後の米国の経済状況は地域によって温度差がより明確になる可能性があります。なお、来週の27日に各州の小売売上高の集計(5月分)が公表される予定で、米国地域差による温度感が注目されます。

来週はちょうどジャクソンホール会合が開催されるタイミングでもあり、こうしたイベントが米株市場の「潮目」となるかが焦点になりそうです。

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