需給要因とボトルネック不安
8月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は28,000円台や200日移動平均線を下回る推移となっています。引き続き株価浮上のきっかけを掴み切れない状況が続いています。
確かに、足元の日本株は、新型コロナウイルスの新規感染者数が加速度的に増加していることや、秋に政治イベントが控える不透明感、そして、積み上った信用買い残の戻り待ち売り警戒などが重石となっています。特に、信用買い残については、8月は日経平均が高値をつけた2月から6カ月目ということもあって、いわゆる制度信用取引の期日が意識されていると思われます。
また、国内企業の決算に対する株式市場の反応も、素直に好感されて株価を上昇させるものもあれば、好業績でも売られるものもあるなど、相場全体として一貫性がない印象となっています。今週は、トヨタやソニーなどの主力企業の決算が発表されましたが、中でも、トヨタの4-6月期の決算は、純利益が前年同期比で5.7倍となる8,978億円でした。この純利益の規模は、コロナ禍前の2019年4~6月期の6,829億円を超え、4~6月期としては過去最高となっています。北米や中国、日本といった世界の主要市場で新車販売が伸び、自動車業界で懸念されている半導体不足の影響も乗り越えた格好です。
こうした決算を受けて、金融機関が目標株価を引き上げるなど、評価も悪くなかったのですが、株価の初期反応は下げる場面があり、今のところイマイチとなっています。トヨタの株価は5月から6月にかけて大きく上昇していたほか、信用買い残も2018年11月以来の水準に積み上っていることもあって、上値が重たくなっていると考えられます。
もちろん、信用買い残がある程度整理されて、需給要因が改善すれば、株価が上値をトライすることも想定されるのであれば、中長期的には買い場となります。ただし、新型コロナウイルスの変異株(デルタ株)が世界各地で猛威を奮っており、東南アジアの工場が操業停止に追い込まれるところが出始めるなど、サプライチェーン(供給網)のボトルネックが懸念されている面があることを踏まえると、今後のコロナの状況によっては中長期的な業績への悪影響も心配されます。実際に、トヨタは、2022年3月期通期の業績予想を、「先行きが不透明」として据え置いています。
そのため、足元の冴えない株式市場が「絶好の買い場」なのか、「下落基調の継続」なのかの判断に迷う展開がしばらく続きそうです。
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