リスクマネーのコントロール
今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ、29,000円台や75日移動平均線水準からの上値が重たい状況が続いています。基本的には、新型コロナウイルスのワクチン接種進展期待による出遅れ修正基調が続き、上値をトライする場面も訪れるかと思われますが、中長期的にはいくつかの注意点があるかもしれません。
確かに、国内のワクチン接種が広がることによって、これまで抑圧されてきた企業の業績が急回復していくことが見込まれますが、日本はコロナ禍での保障やサポートが充実していたとは言えず、耐性がある大手企業は別として、中小企業を中心に受けたダメージはかなり大きく、ワクチン効果が現れ始めた頃の状況によっては、米国のように、一気に経済が盛り上がれない可能性があります。また、五輪や衆院選挙などのイベントをどう通過するかにも影響されるため、現時点で積極的に期待を先取りできない面があります。
米国についても、バイデン政権の経済政策の後押しもあって、今後2~3年間は高い経済成長率が見込まれており、株式市場は基本的に上昇シナリオが想定されています。足元では、経済指標の結果や要人発言などを睨みながら、物価や金利の動向によって株価が上げ下げを繰り返しているものの、最高値圏での推移となっています。ある程度の物価・金利上昇は想定内としてすでに受け止められ、余程の大きな動きがみられなければ、米FRBが金融緩和の出口を急がないという見方となっています。
とはいえ、ビットコインなどの仮想通貨の乱高下や、原材料をはじめとする商品価格の上昇傾向、「Meme株」と呼ばれる一部の投機的な動きをする銘柄の盛り上がりなど、金融緩和によって生み出されたリスクマネーの行き先において過熱感も意識され始めています。とりわけ、商品価格については、原油(WTI)が2018年時の高値に近付きあることや、大豆価格もここ1年ほどで倍になっています。コロナワクチン効果による正常化に伴う需要の増加が影響していますが、金融緩和によるリスクマネーも価格上昇に寄与していると考えられます。つまり、現在の商品価格は実際の需要に、リスクマネーの流入分が上乗せされているわけです。
これから経済が本格回復していく中で、原材料の価格が先取りして上昇し過ぎてしまうと、コスト増など実体経済への悪影響も懸念されます。経済を支えるための金融緩和が、逆に経済の足を引っ張る副作用として機能してしまう事態も有り得ます。「そこそこの経済指標の結果によって金融緩和継続観測が強まり、リスクマネーが株式市場や、仮想通貨、商品市場などに流れ、それぞれの価格が上昇していく」という一方、「結果的に必要以上にインフレ圧力が強まってしまい、本来の経済回復の勢いを削いでしまう」という構図です。
そのため、米FRBなどの金融当局は引き締めやそれに向けた議論をちらつかせつつ、相場の過度な加熱を抑制していくといった具合に、リスクマネーをコントロールしていくことが考えられ、相場はジリ高、もしくはもみ合いをしばらく続ける展開が想定されそうです。
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