出始めた「コロナ対応力」の格差
今週の国内株市場ですが、日経平均は28,500円辺りまで押しては買われる展開を繰り返していましたが、28日(木)に大きく下落して取引が始まりました。日米ともに企業決算の発表が相次いでいますが、今のところ、相場の一段高の起爆剤にはなっておらず、29,000円台まで目前に迫った直近高値(1月14日の28,979円)を抜け切れていません。反対に、28,000円割れが意識される場面も出てきており、これまでの「下げ切らない強さ」が試される状況となっています。
そんな中、今週の26日(火)にIMF(国際通貨基金)が、世界経済の見通しを改定しました。2021年の世界全体の成長率見通しをプラス5.5%とし、前回(プラス5.2%)から上方修正され、巨額の財政出動と新型コロナウイルスのワクチン効果を前提に持ち直す見通しとなっています。
個々の国別で見れば、日本は3.1%(前回は2.3%)、米国は5.1%(同3.1%)、インドは11.5%(同8.8%)と引き上げられた一方、中国が8.1%(同8.2%)、ユーロ圏が4.2%(同5.2%)と引き下げられており、まだら模様です。とりわけ、日本の引き上げ幅は0.8ポイントと大きくなっています。
とはいえ、日本の経済回復は2022年あたりに2019年の水準に戻るペースですので、実際のところは力強い回復とは言えません。むしろ、引き下げられた中国の方が8%台のペースで成長しています。中国は2020年も主要国の中で唯一プラス成長を維持しています。
注意すべきなのは、次第に「コロナ対応力の差」が出始めてきたということです。そもそも、見通しの前提となっているワクチンについては期待が高まる一方で、ワクチンの供給が追い付かず、奪い合うような構図となっており、供給・接種率の面で思ったよりも時間が掛かりそうなことや、格差も顕在化していく展開も可能性があります。
また、財政面においても、早い段階でコロナの封じ込めに着手した中国などでは、コロナ禍の影響を軽減させるよりも、経済復興や再成長へ多くの資金を投じることができる一方で、日本や米国、欧州では、まだ感染抑制の方にウエイトを置いている状況です。日本においては、コロナ収束後に打つべき「Go Toキャンペーン」を中途半端な時期に開始したため、その財源の一部が本来の目的ではない、キャンセル料の補填などに回る事態になっています。
さらに、コロナ対応の格差だけでなく、金融緩和によってもたらされた株高は、その恩恵を享受できる人とそうでない人とのあいだの経済格差を助長しているとの指摘も出始めています。「音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない。」という言葉があるように、足元の株式市場は実体経済との乖離が指摘されながらも好調さを維持し、日経平均の3万円台乗せのシナリオも十分可能と思われますが、このままの状況で貪欲なまでの株高が続くと、株高自体が批判の的にさらされることも考えられるため、注意しておく必要がありそうです。
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