「株高の歯車」の噛み合わせ

2021/01/15

連休明けとなった今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ28,000円台を維持する展開となっています。
新型コロナウイルスの動向について、国内では非常事態宣言の対象地域が拡大しているほか、米国でも感染者数の増加が続いています。封じ込めに成功しているとされている中国でさえも、一部都市での感染者増加が報じられるようになってきました。その他にも、トランプ米大統領の弾劾をめぐる政治的混乱や、長期金利の上昇傾向など、足元の状況は目立った改善があるわけではないのですが、株式市場は堅調さを保っています。
こうした株高の背景を整理すると、金融緩和によるカネ余りと低金利の継続を前提に、他の資産と比べた株式の優位性のほか、コロナの感染が拡大すれば、IT・ハイテクや巣篭り、リモート、DXなどのwithコロナ関連が物色され、感染が落ち着けば、経済・社会の正常化期待で景気敏感株やコロナ禍で売られた銘柄が買い戻されるなど、どの状況下においても「買える」対象が存在すること、株価と実体経済との乖離が指摘されても、売り方が踏み上げられてしまい、「リクツで下値を拾う」よりも「勢いで上値を追う」しかなくなる市場のムードなど、「株高の歯車」の噛み合わせが上手く機能している結果と言えます。
とはいえ、まもなく日米で決算シーズンが本格化し、これまで株式市場が先取りしてきた企業業績や見通し期待と現実とのすり合わせが行われるタイミングに差し掛かります。思ったよりも業績の伸びがなければ、上昇傾向にあるPER(株価利益倍率)の高止まりや、株式益回りの低下による、債券利回りとの差(スプレッド)の縮小につながっていきます。とりわけ、足元は米長期債利回りの上昇傾向が意識されていることもあり、注意が必要です。
さらに、コロナの状況についても、ゲームチェンジャーとされるワクチン接種が始まった米国や英国でさえ、まだ感染者が減少傾向に転じておらず、効果が出るまでに思ったよりも時間が掛かってしまう懸念も出てきています。
そのため、「ウイルスの不安を、ワクチンや金融・財政政策などが跳ね除ける」という相場の構図が変化し、歯車の噛み合わせにズレが生じる展開も想定しておく必要がありそうです。

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