「先取り」の早さで上昇した株式市場

2020/11/13

今週の国内株市場ですが、日経平均は一気に25,000円台に乗せる展開となっています。米大統領選挙で一応の見通しがついたことや、新型コロナウイルスに対するワクチン開発で前向きな材料が出たことを受けて上昇した米国株の流れに乗っている格好です。

その一方で、TOPIXは11月11日(水)の取引終了時点でまだ2月の年初来高値に届いていませんし、マザーズ指数についても、急上昇する日経平均とは対照的に大きく下げる場面があるなど、日経平均の強さが目立っています。

日米の株式市場ともに、コロナ禍で「負け組」とされてきた景気敏感株を中心に買いが入り、これまで相場を牽引してきた巣篭り関連やIT関連が売られる構図で株価が上昇しているというのが足元の特徴です。米ファイザー社と独ビオンテック社で共同開発している抗コロナウイルスワクチンの検査結果が良好だったことが報じられ、「アフターコロナ」への期待がそれだけ大きいことがうかがえます。

ファイザー社のワクチンは、早ければ11月第3週にもFDA(米食品医薬品局)に緊急使用の許可を申請するとされているため、思ったよりも早く実用化に向けた動きになっていますが、その一方で、このワクチンはマイナス70度-80度の低温を維持して保存する必要があるとされており、普及スピードや安全性などに課題が残されているため、実際の経済回復スピードが市場の期待に沿うかは不透明です。

米国の政治動向についても、なおトランプ陣営の動きが警戒されているほか、上院の議席もまだ確定していません。さらには、バイデン陣営の閣僚人事やコロナ対応などもまだ不透明ですので、こちらも懸念が燻っています。

昨今の株式市場は、金融緩和による巨額のマネーとプログラミング売買の影響もあって、期待や不安の「先取り」が早くなり、市場の動きが大きくなる傾向があります。そのため、「株価水準が適正かどうか」よりも、「相場が強いか弱いか」で動く局面が増えている印象です。足元は後者が該当していると思われるため、近いうちに株価の上昇が一服する可能性は高そうです。

今後もさらに株価が上昇していくには、現在の株価水準を正当化できる理由や、米新政権への期待感などが必要で、IT関連株などのグロースと景気敏感株のバリューの循環が働くことができるかが焦点になります。もっとも、今月下旬からは米国でクリスマス商戦が本格化しますので、それまで相場がある程度持ちこたえれば、さらに上昇する展開は想定されそうです。

とはいえ、「先取り」の早さは、別の警戒感の芽となる可能性があります。仮に、ワクチン開発と普及が市場の期待通りに進み、経済の持ち直しが鮮明となって、足元の期待通りの展開となれば、今度は思ったよりも早く金融緩和の出口が意識されることになることも考えられ、波乱となる展開には注意かもしれません。

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