米中対立は本格的な下落材料となるか?

2020/08/07

8月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、日経平均は22,500円付近まで株価水準を切り上げています。

先週末まで6日続落かつ22,000円台割れとなっていたことによる反発期待や、為替市場のドル安/円高傾向が一服したことが株価上昇の背景にありますが、ただその一方で、そこからの上値を伸ばせず、ひとまず6月からのレンジ相場の中心および25日移動平均線まで値を戻して、次の展開を待っているような印象です。

今週は国内企業の決算発表ラッシュで約1300銘柄が予定されています。予想以上に業績が良かった銘柄や、内容は冴えないものの、通期の業績見通しを公表したことで悪材料出尽くしと受け止められた銘柄などが素直に買われるなど、決算に対する株式市場の反応自体に波乱はありませんが、これまでのところ市場全体のムードを強気にさせるには至っていません。

引き続き、外部の相場環境はコロナ感染と実体経済の動向をにらみながらの展開となっていますが、先週の下落要因となった為替市場のドル安/円高と、米中対立の悪化が気掛かり材料として燻っています。

為替市場については、4月以降のドル/円相場は、1ドル106円~108円をメインレンジとする中、7月末にかけて104円台前半まで円高が進みました。FRBによる積極的な金融緩和や、最低水準となっている米長期金利など、もともとドル安になりやすい地合いとなっていましたが、6月の個人所得が予想以上に減少したことや、追加の経済政策をめぐる与野党の協議が難航する中で、失業給付金の特例措置(週600ドルの追加給付)が7月末で終了し、今後の消費への影響が懸念されたことがドル安を加速させました。今週に入ってドル安/円高は一服していますが、注意が必要です。

さらに、米中対立の悪化も警戒材料です。直近では米中領事館の閉鎖や、動画投稿アプリ「ティックトック」の利用制限などの動きが見られています。従来であれば、「米大統領選を控えた政治的アピールの面が強く、政経分離(政治と経済を切り離す)の考え方により、両国の利益を大きく損なうことはないだろう」という見方となり、過度の悲観は禁物となります。

ただし、今回については、領事館閉鎖による外交チャネルの削減という新しいアプローチを採っていることや、米国がこれまで避けてきた習近平氏への名指し批判をはじめたこと、そして、コロナ禍以降の中国の外交が強硬姿勢を強めていることなど、いわゆる「香港国家安全維持法」成立を境に対立の構図がさらに深まった可能性があります。まだ米国の本気度が分からないため、積極的な売り材料とはなっていませんが、しばらくは株価の重石になると思われます。

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