日本株は循環物色の流れから上値トライへと舵を切れるか?

2020/07/17

今週の国内株市場ですが、日経平均は株価水準を切り上げる動きとなっています。15日(水)の取引では23,000円台まで目前に迫る場面もありました。

 

こうした上昇の背景にあるのは米国株です。新型コロナウイルスのワクチン開発への期待感を背景に前晩のNYダウが大きく上昇し、テクニカル分析面では直近で抜け切れなかった200日移動平均線をようやく上抜けたことでムードが改善しました。相場の牽引役である大手ハイテク銘柄は利益確定売りなどで冴えなかったものの、資源関連や建設関連などの景気敏感株に向かう「循環物色」のような動きが見られました。

 

米国では大手金融機関を皮切りに、今週から決算発表が本格化します。企業業績を手掛かりにして循環物色の流れが続けば日本株の追い風にもなります。これまで一部の銘柄に資金が集中してきた分の受け皿ができるかが今後の注目点です。国内でも間もなく決算シーズン入りとなります。

 

実際に、最近の東証1部の全体の動きを示すTOPIXは日経平均と比べて弱い値動きが続いていました。NT倍率(日経平均÷TOPIX)が14倍台の高水準が続いていたほか、東証1部の「騰落レシオ(25日間)」もここ1カ月間あまりで150%台から70%台へと大きく低下しています。この機関の日経平均は22,000円台でのもみ合いが続き、株価水準はあまり動いていないにも関わらず、騰落レシオが下がり続けたということは、それだけ一部の銘柄に資金が集中していたと言えます。

 

とはいえ、新型コロナウイルスの状況は引き続き相場の警戒材料となります。米国ではNY州など改善を見せるところがある一方で、カリフォルニア州やフロリダ州など、拡大が現在進行形で続いているところもあり、ばらつきがあります。こうした感染状況と抗コロナのワクチン・治療薬開発動向が綱引きをする構図はまだ続きそうです。

 

日本でも感染拡大の兆しが見えつつある中、国内旅行需要を喚起させる、いわゆる「Go To キャンペーン」が実施されようとしています。ただ、直前になって色々と議論を呼んでおり、内容の変更や実施の時期、中止も有り得ますが、当初の予定通り実施されれば感染者の増加が懸念されます。現時点での日本の感染者・死者数は海外と比べてかなり優秀とされていますが、6月の東京のPCR検査の陽性率が5.8%を超えているなど、単純な数の比較だけでは楽観視できない面があります。

 

もちろん、「Withコロナ」による経済再開の動きは重要ですし、経済再開による一定の感染者数の増加も想定内です。ただし、どこまでの増加なら許容できる医療体制なのか、再び経済を抑制する措置を採る判断と基準はどこにあるのかなどの根拠や説明、そして国と自治体の連携などの準備ができているのかについては、東京の感染者増に対しての責任を国と東京都で押し付け合いをしている状況においては微妙と言わざるを得ません。

 

日経平均は直近で23,000円台の回復もありそうですが、さらなる上昇基調へとつながるのかどうかは来週の連休後のコロナ情勢にも左右されるため、その見極めはもうしばらく先になりそうです。

 

 

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