相場の「過熱感」をどう捉えるか

2020/06/12

今週の国内株市場ですが、日経平均がついに23,000円台に乗せてきました。最近までの相場の勢いを一応引き継いでいる格好です。

 

前回のコラムでも指摘しましたが、株価チャートを過去に遡ると、昨年11月から今年の2月中旬まで23,000円~24,000円の天井圏で3カ月市場のレンジ相場を続けており、ここから先は戻り待ち売りが意識される価格帯に差し掛かります。

 

日経平均は21,000円、22,000円とスルスルと駆け上がってきましたが、23,000円の節目はこれまでとは違った意味合いをもっているため、このゾーンを上抜けるには、新たな買い材料が出てくるか、このままの勢いで押し切ってしまうか、ほとぼりを冷ます一定期間のスピード調整が必要になると思われ、相場の過熱感への意識が重要になってきます。

 

相場の過熱感を探るテクニカル指標としては、「移動平均線乖離率」が知られています。移動平均線は一定期間の値動きの中心線ですので、株価がその中心線から乖離するほど、相場は行き過ぎと判断できるわけです。今週8日(月)の取引では、日経平均の25日移動平均線乖離率が+10.22%となり、2014年11月以来、約5年半ぶりの+10%乖離となりました。25日移動平均線乖離の場合、5~6%が行き過ぎの目安とされていますので、10%超えはここ数年で数える程度しか達成しておらす、「かなり過熱している」と見ることができます。

 

普通に考えれば、「相場は行き過ぎているため、近いうちに株価が大きく下落する」となるのですが、先ほどの2014年11月の時は、しばらくもみ合いが続いた後、大きく再上昇しています。さらに過去に遡ると、2013年1月、2013年5月にも10%超えが出現しましたが、相場が大きく崩れることはなく、その後も上昇基調が続くというパターンが多くなっています。

 

トレンドは事態の急変がない限り、次第に勢いを失って天井や底を形成していきますし、「10%を超える乖離率になるほど、トレンドの勢いは強い」と捉えれば、一気にトレンドが転換していくのではなく、相場の勢いと、先ほどの株価の水準感を見極めながら、次の方向性を探っていく様子見になっていくのかもしれません。

 

ちなみに、過去において10%以上乖離していたのは、2012年11月からのいわゆる「アベノミクス相場」初期のタイミングに集中しています。楽観的な見方をすれば、「現在はアベノミクス以来の大相場が訪れている」可能性もあります。

 

ただし、アベノミクス相場はリーマン・ショック後の底値圏からスタートしていますが、今回のコロナ・ショックは天井圏からスタートしているという違いがあります。また、相場が描いている期待と実際の実体経済とのあいだにギャップが存在しているほか、ここ2週間の買いの勢いの背景にある、外国人の見直し買いや売り方の買い戻し、個人投資家の新規参入の買いなど、需給要因がひとまず今週末のメジャーSQでピークを迎えます。

 

したがって、目先の調整が予想されつつも、大相場の兆しが見られる足元の状況は、判断が難しい局面と言えそうです。

 

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