イラン情勢は2020年相場の新たな不透明材料に加わるか?
2020年相場入りとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は荒っぽい値動きが目立っています。
昨年末(大納会)の終値が23,656円だったのに対して、大発会の1月6日(月)終値が451円安の23,204円、7日(火)が370円高の23,575円、そして8日(水)が370円安の23,204円と、株価の上げ下げが激しく、とりわけ8日(水)の取引時間中には節目の23,000円台を下回る場面がありました。
こうした株式市場の不安定さの背景にあるのは、にわかに緊張が走った中東情勢です。イラクの空港でイランの要人(イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官)が米国の空爆によって殺害されたのが事の発端になります。市場はイラン側の報復を警戒して原油や金の価格が上昇、ムードはリスクオフへと傾き、大発会の大幅株安につながった格好です。
翌7日(火)の株価は反発に転じます。「大統領選挙を控える米国も、経済制裁に苦しむイランも、お互いに全面的な武力衝突は避けたいだろう」、「米国はシェールオイル革命により、原油の中東依存度が低下しているため、原油価格変動の影響は限定的」という見方や、昨年9月にサウジアラビアの石油施設がドローンによる攻撃を受けるという事件が発生し、地政学的リスクが高まった時期がありましたが、比較的短期間で警戒モードが落ち着いた経緯も楽観的な見方を支えた面があります。
しかし、8日(水)はイランがイラクの米軍基地に弾道ミサイル攻撃を行ったという報道を受けて、株式市場は再び大きく下落していきます。とはいえ、日経平均は75日移動平均線や23,000円などの節目が下値のサポートとして意識され、本格的な下落基調入りは回避されています。
今回の事態は米国が先制する形で行われました。トランプ大統領は「米国民を守るため、開戦ではなく、戦争を避けるために攻撃を命じた」としていますが、自身にかけられている弾劾裁判からの注目を逸らすためというねらいも透けて見えます。空爆を行ったタイミングは、ちょうど米国議会が再開され、上院で弾劾裁判をめぐる与野党の攻防が始まる直前でした。
その後のトランプ大統領の声明やイラン側の発表などにより、全面的な武力衝突はひとまず回避される格好になっています。9日(木)の株式市場も反発してスタートしていますが、小規模な武力行使やイランの核開発をめぐる米国の制裁圧力、反米勢力によるテロ活動などの懸念が燻る可能性があります。
状況が長期化・悪化すれば、米国民を守るために行ったものが、いつどのように報復されるかわからない不安感を増幅させてしまい、「そもそも最初に空爆をする意味があったのか」という批判につながりかねません。
結果的にトランプ大統領が支持を失って再選の見込みが低下することで市場の動揺を誘うなど、今後の米大統領選や市場の行方にも影響を与えてしまうシナリオが浮上するかもしれないことには留意しておく必要がありそうです。
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