本質は何も変わっていない「米中摩擦」の構造
今週の日経平均ですが、株価水準を一段切り上げての展開となっています。先週末に行われた米中首脳会談において、「協議の再開」や「対中制裁関税第4弾実施の見送り」、「中国企業の華為技術(ファーウェイ)に掛けられている取引規制の緩和に言及」などが確認され、株式市場はこれらを好感する格好で21,500円台超えとなっています。
とはいえ、さらなる上値追いの動きはこれまでのところ限定的です。確かに、今回の米中首脳会談に関するニュースのヘッドラインだけを拾うと、かなり前向きな印象を受けますが、実際には、市場の想定の範囲内だったものが多いほか、今後のスケジュールや詳細についてもまだ具体的にはなっていません。
そのため、米中関係改善による景気や企業業績の持ち直しの見込みを積極的に先取りしていくにはパンチ不足だったと思われます。そして、そもそも「中国側の譲歩と米国側の妥協」という従来の米中摩擦の構図は変化していません。
これまでの米国は中国からの譲歩を引き出すために、関税引き上げや取引規制などの圧力をかけてきましたが、今回の会談では、圧力の緩和という妥協プランを先に示し、中国からの譲歩を待つという具合に、米国がちらつかせるのが「ムチ」か「アメ」かの違いだけという見方もできます。
いずれにせよ、米中関係改善は中国側からの次の動き待ちの状況と言えます。中国では8月頃に「北戴河会議」の開催が予定されています。北戴河は北京から280キロほど離れたリゾート地で、習近平氏を中心とする政権指導部と、引退した長老らが例年この地に集まって、国政の重要課題について話し合いが行われます。米中関係に目立った進展がないまま会議を迎えれば、習近平氏の立場が微妙になることもあり得ます。
また、これまでの米国株の上昇要因は、主に「米FRBによる利下げ」と「米中摩擦の改善」に対する期待感が押し上げてきましたが、そもそも米FRBの利下げ期待の背景にあるのは、米中摩擦の長期化による実体経済への影響懸念です。米国株市場は年内に2~3回の利下げ実施を織り込んでいるとも言われています。
仮に米中関係が改善に向かえば、実体経済への不安も後退することになりますので、利下げを正当化する理由も薄らぐことになり、相場のシナリオが再構築される展開も想定されます。今週から7月相場入りとなりましたが、日米の企業決算が本格化するタイミングでもあり、政治的な思惑だけではなく、企業業績や経済指標などの実体経済面が相場を動かす場面が増えると考えられますので、相場の先行き不透明感が和らぐにはまだ時間が掛かるのかもしれません。
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