不透明感が続く米中関係 「楽観シナリオ」の賞味期限はどのくらい?

2019/05/31

今週の国内株市場は、日経平均がこれまでのところ21,000円水準をはさんでの攻防が続いています。相場のムードを抑制しているのは引き続き米中摩擦ですが、その状況は関税の引き上げや華為技術(ファーウェイ)に対する取引制限が実施されるなど、着実に悪くなっています。

 

ただし、その割に相場が崩れてはいないのは、米中ともに最悪の事態は望んでいないという良心的判断と、政治的決断によって状況が一気に好転するのではという期待感です。スケジュール的にも、来月28日にG20サミットが開催されるというタイミングですので、近いうちに何らかの進展があってもおかしくはありません。

 

とはいえ、事態が進展するという楽観シナリオは、「米国が中国に対して圧力を強める中、中国側が譲歩できるか?」が前提になっています。今週、米国が「為替報告書」というのを公表しましたが、為替報告書の公表は4月と10月というのが普通とされており、ここまで遅延したのは、中国を「為替操作国」として認定するのではないかなど、様々な憶測を呼んでいました。為替操作国に認定されると経済制裁措置が行われる可能性が高くなります。

 

公表された報告書では、中国が前回の公表時と同じ「監視リスト」入りにとどまる内容でしたので、特段の驚きはなかったものの、米財務省高官が今回の遅れに対して、「米中協議の進捗を注視していた」と述べていることもあり、対中国への圧力として次回の公表も注目を集めそうです。

 

その一方で、中国側については米国に対して譲歩の構えを見せる動きは今のところ見られません。そもそも、米国がここまで圧力を強めたのは、合意が間近という見方が強まる中で、いきなり合意文案の内容を3割も削ってきた中国側の対応の変化が発端になっています。

 

その削った部分には、合意内容の遵守と違反した際の法的拘束力について触れている内容があり、それが「不平等条約」にあたるという国内からの批判を、政権もしくは習近平自身がかわしきれなかったという見方があります。となると、関税が引き上げられる前の段階で中国側の態度がすでに硬化し始めていることと、合意の落ち着きどころを中国国内でまとめるのが難しい状況であることがうかがえます。

 

来週から6月相場に入りますが、1日(土)には中国側からの対米報復措置として、2493品目に対して関税率が引き上げられる予定であるほか、4日(火)は天安門事件から30年の節目を迎えます。そのため、中国側のムードは国威発揚のために強気に出る可能性があり、実際に、中国国内の報道では対米長期戦を見据えた記事などが増えているような印象です。よって、楽観シナリオの前提となる中国側の譲歩については、少なくとも来週は期待できないのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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