引き続きダウンサイドリスクに備えよ
6月も終わりというのに、今年はいまだに「台風1号」が発生していない。私が調べたところ1951年の統計開始以来、第3番目の遅さである。第2位が1973年7月2日、そして第1位が1998年7月9日となっている。さて、遅くなったが5月のモデルポートフォリオの状況ならびに近況について記したい。
5月のマーケットは日米市場ともに上昇。
米国市場は4か月続伸。4月の雇用統計は+16万人と予想の+20万人を大幅に下回ったものの、相対的に堅調なマクロ指標を受けてFOMCは数か月以内の利上げ観測を示したため、警戒感が強まり5/20まで4週続落。一方、原油先物相場は一時50ドル台まで回復し、ギリシャへの追加的金融支援の決定で欧州株は堅調な展開に。5月のNYダウは17787ドルと前月より14ドル上昇し月間騰落率は+0.1%。ナスダックは4948となり173ポイント上昇の+3.6%となった。
東京市場は反発。4月末の日銀の金融政策現状維持を受けて月初は大幅に売られ、日経平均は16100円台まで下落。為替も105.50円レベルまで円高に。その後は、米国の想定外の利上げストーリーにより為替は111.40円レベルまで円安となったことや伊勢志摩サミットへの期待から株式市場は買い戻しが進み日経平均は17000円台を回復。しかし、売買代金は2兆円に満たない日が多く超閑散状態。5月の日経平均は17234円で取引を終え、4月末の16666円から568円上昇し月間騰落率は+3.4%、Topixは+2.9%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が+3.7%、マザーズ指数は+1.2%となった。
太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」 における5月のパフォーマンスは-0.0%となり、年初来-6.5%、累計では+136.8%(4月末+136.9%)とやや後退。5月末時点のポートフォリオの株式比率は51%で17銘柄を保有(4月末は56%で17銘柄を保有)。株式部分の含み益は+9.4%(4月末は+8.6%)。ただし、51%のうちダブルインバースETFの投資比率18%の実質ロング比率は-36%、純金ETFの10%は株式ではないため、純粋の株式のロングウェートは51%ではなく-23%である。4月末の-33%からショートポジションが減少した。
5月は非常にボラティリティの大きい展開となった。日経平均は月初に16100円台まで下がった後、月末には17200円台を回復したが、為替市場ともども伊勢志摩サミットへの期待や「消費増税先送り」&「財政出動」への楽観的な見通しに支えられた面が強い。
伊勢志摩サミットで安倍首相が「現在の経済状況はリーマン・ショック前夜の状況」と述べたことで、外部環境を理由に消費増税先送りのシナリオが濃厚となり、実際6月に入ってその決断をした。しかし、この点についてはすでにマーケットには織り込み済みであり、もはや買い材料にはなっていない。財政出動への期待はまだ残されているものの10兆円以上の大型補正予算にならない限りはマーケットを押し上げる要因には働かないと思われる。
弊社の「投資実践コース」会員向けの6/17付けレポートにおいて「来週はいよいよイギリスの国民投票がおこなわれる。“離脱”という審判が下されれば、世界的にマーケットは一段と大荒れになるだろう。日経平均は2/12の安値14865円を試す展開が予想される」と述べていたが、この予想が的中し日経平均は14952円まで下落した。今回の結果を見て、EUに所属する他の国においても「離脱」を目指す動きが出てくればさらなる火種となることに注意が必要である。多少リバウンドする動きが起こる可能性はあるものの過度な期待は禁物だ。
これからますます大きなダウンサイドリスクと対峙する機会が増えるため、引き続きショートポジションによる運用を継続する方針である。日本企業の1Q決算は強烈な業績悪化で波乱要因になりうるし、イギリスのEU離脱交渉の不透明感&EU内部の亀裂、11月の米大統領選挙の行方などイベントが目白押しだ。
6月24日時点において、6月の日経平均はすでに-13.2%と急落しているのに対して。ポートフォリオは+3.3%と健闘。また、年初来では日経平均が-21.4%に対してポートフォリオは-3.4%となっており下げ局面においても運用資産をほとんど減らさない状況をキープしている。中長期のパフォーマンスの優劣は下げ局面での対処法で大きく差が出るため、現在のような相場こそ運用にとっては最も重要な場面であると言える。
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