米中首脳会談を控え日米株急落─海運市況下落や原油安も一因

2018/11/14

 

「新たな輸出規制」報道の一方、「ロス商務長官の解任検討」報道もあり、過剰反応は禁物なようです

「新たな輸出規制」報道が、閑散市場の値動きを増幅

米国株(NYダウ)は11月12日(月)、前日比▲600ドル超(▲2%超)の大幅安となりました。ベテランズ・デーのため債券市場が休場で、株式市場も取引閑散だったことから値が飛びやすく、実勢以上に売りが加速された面もあると考えられます。この流れを受け翌日(13日)、日本株(日経平均)も一時700円超急落する大幅安となりました。

きっかけは、米中首脳会談(11月30日~12月1日)が近づき、「米中貿易摩擦の緊張が緩和される」との期待や「会談は物別れに終わる」との不安が交錯する市場において、「トランプ政権がこれまでの関税に、新たに輸出規制等を加え戦線を拡大する」(米紙WSJ、11月12日付)など貿易摩擦をあおるトーンの報道が売り材料視されたことでした。

海運市況や原油市況も「米中景気悪化リスク」意識

中間選挙が「ねじれ議会」をもたらし、無難に通過した後、市場の関心は「米中双方が発動した関税が撤廃されず米中景気が悪化するリスク」に移っていたところです(注1)。

(注1)MYAM Market Report「米中間選挙、無難に通過─市場の注目は米中首脳会談へ」(2018.11.9)

ちょうど、世界貿易の先行きを占うための便宜的指標として市場が注目するバルチック海運指数(鉄鉱石等を運搬する外航船運賃の目安)が、今年3月の水準に向け、下落が進んでいたところでした(図表参照)。トランプ政権の鉄鋼・アルミ製品への関税表明で世界的な株安となった3月です。

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加えて、10月の4年ぶり高値から20%下落した原油価格(WTI原油先物)が、 株価急落の12日には心理的節目の1バレル=60ドルを割り込んだことも、短期筋のシステム売買等で株式売り注文を出させる一因になったと考えられます。

「新たな輸出規制」報道は誤報の可能性も

ところが、日米株急落の割に、さほど市場で悲壮感が高まっている様子は感じられません。急落のきっかけとなった冒頭の米紙報道「米政権は新たな輸出規制で戦線拡大」についても、よく読むと、誤報だった可能性があります。「戦線を拡大する」とのくだりは、信ぴょう性が低いからです。

(貿易障壁撤廃に向けた関税交渉を第一ラウンドとすると)第二ラウンドの知的財産の流出抑制策について、トランプ大統領は、中国を狙い撃ちにする政権内強硬派の案を採用しませんでした。穏健派ムニューシン財務長官の既存のCFIUS(対米外国投資委員会)を補強する案を採用したのです。CFIUSは対日貿易摩擦が激化した80年代に体制が整えられた経緯があります(注2) 。

(注2)MYAM Market Report「『貿易戦争』懸念は行き過ぎ─日米株、押し目買いの好機か」(2018.7.3)

輸出規制についても、CFIUSを強化する法案に合わせる形で、「中国に特化しない規制強化が検討される」(ロイター、6月30日付)とされていました。こうした経緯があり、補強されたCFIUSが暫定的にスタートする11月に合わせ、このタイミングで冒頭の「新たな輸出規制」が報道されたと考えられます。そうだとすると、中国を狙い撃ちにした規制強化ではないので、「戦線を拡大する」とのくだりは、取材不足に起因する誤報だったと言えます。

トランプ大統領「ロス商務長官の解任を検討」報道

しかも報道には、暫定的にスタートした「新たな輸出規制」の存続を脅かすリスク要因として、「トランプ大統領、本人である」と指摘した(大統領と商務省関係者の上下関係が逆転した)不思議なくだりもあります。「習近平国家主席の要請で、トランプ大統領が米商務省に命じ、対イラン北朝鮮経済制裁に違反した中国通信機器大手ZTEに対する米国企業の取引を禁じた措置を撤回させた」前例を、当該リスクがある証拠に挙げます。まるで、対中強硬派のナバロ氏やロス商務長官の主張をそのまま記事にしたかのような報道です。

折しも「トランプ大統領、ロス商務長官の解任を検討」(11月9日)と報じられた直後です。これら分析を綜合すると、ロス商務長官らの反対を押し切り、トランプ大統領は米中首脳会談で緊張緩和を演出する公算が高いと考えられます。売り材料視された「新たな輸出規制」報道が、はからずも日米株の買い材料を提供した形です。株価の変動性は高まっても、過剰反応は禁物のようです。

明治安田アセットマネジメント株式会社
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かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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