日独の政局対比は「日本売り」材料─対ユーロ140円超の円安へ
メルケル独首相と比べた安倍政権の財政再建の軽視も円安要因になりそうです。
メルケル独首相、4選で長期政権へ
ドイツ連邦議会(下院)選挙が9月24日投開票され、メルケル首相率いる与党CDU/CSU(キリスト教民主・社会同盟)が他党を引き離して第一党を維持し、メルケル首相は新たな連立政権の年内(クリスマス前)樹立に自信を表明しました。
払拭されたユーロ安要因の政治リスク
今年は、域内各国で予定された一連の政治イベント──とりわけ①オランダ総選挙(3月)、②フランス大統領選(4-5月)、そして③今回のドイツ総選挙──が、「反EU(欧州連合)勢力が躍進すればユーロ売り要因」と警戒されていましたが、結局いずれも、波乱なく終わりました。ユーロは、年初(1ユーロ=1.05ドル、123円)から25日朝(同1.19ドル、134円)までの9ヵ月弱で約1割上昇しています(対ドルで+13%、対円で+9%)。市場の不安心理が高まる局面でみられる逃避的な円買いは、さらに遠のきそうです。
先行き対ユーロでも円安へ
先行き来年にかけてユーロ、ドル、円の相場を見通しますと、欧米での着実な景気拡大を背景に、ECB(欧州中央銀行)やFRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の正常化に動き、ユーロ高とドル高が強さを競う「綱引き」状態になりそうです。一方、日本では2年後には五輪不況が見込まれること等で、日本銀行は正常化に動けず、円安の進行は不可避とみられます。
財政悪化の放置は「日本売り」要因に
前述の「ドイツや米国との金利差拡大」という円安要因に加え、とりわけメルケル政権と比較した「安倍政権の財政再建への消極姿勢」が「静かな円売り」要因となりそうです。
メルケル政権は、130万人超の難民受け入れを表明しただけでなく、リーマンショックや欧州債務危機で悪化した財政を建て直し、財政黒字を実現しました(図表1参照)。これら「痛み」を伴う政策を着実に遂行したメルケル首相は「忍耐の首相」(英BBC放送)として、海外投資家から高い評価を得ています。
対照的に安倍政権は、消費増税を過去2回先送りしたうえ、今般、2019年消費増税において、増税分の8割を財政再建に充てる当初計画を撤回し「使途変更を問う解散総選挙」に踏み切るなど大衆迎合的な姿勢が目立ちます。AAA格のドイツ国債と、かつてAAA格であったもののA格へ下落したまま放置されている日本国債。海外投資家の評価の差は歴然としています。
歯止めのない「日本売り」懸念
2015年6月に黒田総裁の円安牽制発言等により一旦、回避された1ドル=125円超の円安が懸念された頃、対ユーロでは140円付近に到達していました(図表2参照)。米独との金利差拡大に加え、安倍政権の財政悪化の放置を嫌気した「静かな日本売り」により、対ユーロでも140円超の円安が懸念されます。
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