日本株式、潮目の転換か

【ストラテジーブレティン(206号)】

Q) 日本株は米中貿易戦争の様子見をしつつ、かなり長い間もみ合いが続いています。日本株は何故上がらないのでしょうか。

A) 一言で言うと、需給要因、売り方の優勢につきる。空売り比率が史上最高水準まで上昇した。投資家を過度の悲観が支配している証拠といえる。それは株高転換の兆しである。ファンダメンタルズを見ると悪くない。企業業績は順調、株価は割安、唯一の懸念はアメリカと中国の貿易戦争だが、それが世界経済に対して深刻な打撃を与えるものであれば懸念材料になる。しかし、先週末にアメリカの株価(S&P500)が2月のVIXショックの急落を取り戻し、史上最高値を更新した。アメリカのマーケットは、米中貿易戦争を基本的に気にしていないと言える。全く心配ないと言うには時期尚早だが、米中貿易戦争はネガティブな形で市場に影響を与えない形で(決着はしないまでも)推移していくだろう。株式市場が心配している要因はいずれ消えていくと考えていい。空売りの大規模な買戻しも起きるだろう。

Q) アメリカと中国の貿易戦争は、世間では大きな打撃を与えるだろうと言われていますが、必ずしもそうではないだろう、ということですね。

A) アメリカの半導体メーカーの売り上げの半分以上は中国に輸出している。アメリカのスマホはほとんど全部中国から輸入している。従って米中の貿易が途絶えたら、両国とも経済は完全に崩壊する。そんなことは起こりようもない。そうならない形で決着をする、と考えるべきであろう。世界経済の最大の需要家である米国の消費は絶好調で、当面衰えようもない。中国も後で述べるが、景気対策に着手した。グローバルに見て、需要が堅調という構図は崩れない。総需要が変化しないとすれば、貿易摩擦、関税引き上げが供給者をシフトさせることはあっても、総供給には変化を与えない、と考えるべき。例えば米国において中国からの輸入が減り、他国に輸入先をシフトする、あるいは米国内生産が増加する等、他の受益者が発生するはずである。グローバル・サプライチェーンは変わっていくが、時間をかけて世界的な分業のあり方が再構築されていく。問題はあるとしても人々の生活や経済にダメージを与えない形で推移していくと考えるべきであろう。

 

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