不思議の国からの帰還、2018年
【ストラテジーブレティン(191号)】
不思議の国日本
今の日本は不思議の国である。水(資本)が下流から上流に向かって流れているのに、みんながそれを当たり前と思っている。おかげで本来灌漑され肥沃なはずの平野が枯れ野となり、他方では上流のダムの中には利用されない水が満々とたまっている。下流の枯れ野の生活にくたびれ果てた人々は、ここは見込みのない宿命の不毛地だ、諦めよう、欲望を抑えよう、つつましく生きようと思い込んでいる。オピニオンリーダーたちは成長は無理だ、利益分配を求めるのではなく、負担を分配しあおう、と人々を鼓舞している。水とは資本である。日本では長らくリターンが高い部門から低い部門に向けて資本が流れ続け、人々はとうとう逆流が本来の姿であるかように錯覚するに至った。
成長は幻想と主張する指導者、例えば枝野幸男氏
今最も人気ある政治家である立憲民主党党首の枝野幸男氏は東洋経済刊行の著書「叩かれても言わなければならないこと」(2012年9月)で、成長期待という幻想を捨てよ、と主張した。曰く「責任ある政治家は有権者に耳障りなことでも主張すべきだ。企業が儲かり、それが従業員や中小企業に波及するという経済の果実が滴り落ちるというトリクルダウンは時代に合わない。この成熟した人口減社会において旧来型の経済思想から脱却し成長できないことを受け入れるべきだ。政治は今までの利益分配の政治から負担分担の政治へ変わる必要がある。成長は幻想だ。負の再分配を経過しないかぎりは成熟した豊かさには行き着けない。」
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