新産業革命における米国の圧倒的競争力、最大要因は資本市場の効率性
【投資ストラテジーの焦点(302号)】
米国金融資本市場に対する市場の注目は高い。規制を強化するのか緩和するのか、例えばグラス・スティーガル法の復活(銀行証券の分離)をするのか、ドッド・フランク法の中のボルカールール(銀行の自己勘定による市場取引規制)を緩和・廃止するのか、等はトランプ政権の政策焦点である。またQE(量的金融緩和)の出口がスムーズであるか否か、を投資家はかたずをのんで見守っている。それが銀行の収益に直結し、直ちに株価に大きな影響を及ぼすからである。しかし細部ではなくダイナミックに変化する米国金融資本市場の全体像はどうなっているのか、その総合的評価はどうか、という点での議論が等閑視されているのではないか。
より重要なことは、資本市場が適切に機能し経済的厚生の実現に寄与できているかであろう。資本市場の変化を突き動かしている原因は何か、資本の需要と供給のマッチングの場としての資本市場がどのように変わってきたのか、を俯瞰的に考えることが肝心である。
(1) 好パフォーマンスの米国資本市場
資本市場が機能しているかどうかの解は、金融にはない。所与の条件(技術、資本ストック、人口と労働力)の下で経済パフォーマンスを最大化できているか、資本のシーズとニーズのマッチングがなされているかどうかが鍵であるが、それらに関して米国の資本市場パフォーマンスは世界最高であると言える。米国はリーマン・ショック以降の経済パフォーマンス、経済成長、雇用創造、企業収益の伸び、等において先進国で最も優れており、デフレ陥落のリスクが最も小さかったことは、その証左である。
群を抜くリスクキャピタルの提供
米国経済の好パフォーマンスの背景にある資本市場の寄与として3つの要素が指摘できる。第一は、米国が世界で最もアニマルスピリットの涵養に成功していることである。高株価が維持されPBRは世界最高である。またクレジットのリスクプレミアムは歴史的水準まで大きく低下している。さらに資本余剰の程度は相対的に小さく、利子率の低下は限定的でデフレの危険性が最も小さかったことが指摘できる。図表3見るように米国の長期金利は先進国では最も高くなっている。つまり米国資本市場は先進国で最もリスクキャピタルの提供に成功してきたのである。