超過利潤時代の中央銀行の挑戦、マイナス金利の導入

【投資ストラテジーの焦点(299号)】

(1) 世界に先駆ける黒田イニシャティブ、マイナス金利導入、中国危機も封印へ

世界株安は大転換へ、黒田日銀総裁のイニシャティブ光る

1~2月の急激な世界株安を経て、世界の中央銀行は協調的危機対応、という新たな段階に入って来ている。春先以降は原油価格下落のプラス効果により先進国経済成長が加速することも期待され、中国危機が封じ込められれば、世界株式が反発するという可能性が浮上してきた。

この世界的危機管理作戦において、黒田日銀総裁のイニシャティブが際立つ。マイナス金利導入という「奇策」を打ち出して日銀の無能化説を打ち消し、かつ世界的金融緩和を先導した。

今回の日銀の金融緩和政策は、2015 年後半から始まった投機筋の市場売り崩しに対しての、先進国の中央銀行としての初めての本格的対応である。中国経済失速により現在の世界経済の最重要リスクは依然としてデフレであり、先進国中央銀行の最大の任務はデフレ回避であることが鮮明になった。その際、デフレの病が最も深刻で、対デフレ戦争の経験が最も豊富な日本が先導を務めることは自然である。とはいえ、黒田氏の大胆さも敬服に値する。「諸悪の根源はデフレであること、デフレの制圧はどのような犠牲を払っても実現するべきであること」に照準を絞り、目的合理的にことを進める。それは平時ではなく対デフレ戦争という戦時の司令官に求められる資質であろう。日銀に続きドラギECB 総裁も3 月政策総動員とみられる追加緩和を実施、FRB も景気に対する自信を表明しつつも、世界的金融不安のリスクに配慮し利上げペースを緩和する姿勢を見せている。

 

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