ギリシャ国民投票で緊縮策にノー、債権者側とドイツは譲歩を迫られるだろう

【ストラテジーブレティン(141号)】

経済の合理性が貫かれるならギリシャ債務問題は解決へ

7月5日のギリシャ国民投票によりギリシャ国民はノー、つまりチプラス政権の呼び掛けにこたえ、債権者側の緊縮財政の要求を拒否する態度を表明した。債権者側とドイツは信任を得たチプラス政権に対して一定の譲歩、緊縮財政要求の緩和と債務のリストラクチャリングをするか、ギリシャにユーロ離脱を迫るかの選択を迫られる。しかし、債権者とドイツ側に選択の余地はなく、譲歩による合意成立、ギリシャのユーロ残留の可能性が高いと思われる。その見通しが立った時点で世界式は大きく反発するだろう。

そもそもギリシャ債務は民間の債務ではなく、ギリシャ政府と中央銀行による EU、ECB、IMF という国際公的機関に対する債務であり、それは各当事者の判断ひとつで弁済遅延容認がなされ、破たんは回避される性格のものである。特に命綱を握る ECB がギリシャへの資金供給を断つとは考えられない。ギリシャは資金枯渇による突然死の可能性は限りなく低いのである。

ギリシャの地政学的重要性
債権者(EU、ECB、IMF)とドイツがこれまでの主張を貫き交渉が決裂することは考えられない第一の理由は地政学にある。債権者とドイツ、米国はギリシャの持つ地政学的重要性からして、ギリシャをロシア・中国側に押しやることは絶対できない。混乱する中東、ウクライナ・東欧に対する NATO の最前線として、バルカン半島の突端に位置する要衡ギリシャを失うわけにはいかない。ギリシャの国防支出の対 GDP 比は 2.2%と米国(3.5%)に次ぎ NATO第二位である(ドイツは 1.2%)。NATO は加盟 28 か国に GDP 比 2%以上の軍事支出を求めているとされ、ギリシャは NATO の優等生なのである。チプラス政権もギリシャ国民の大多数もユーロ離脱も、ましてや西側の一員としての NATO からの離反も望んでいない。

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