2025年「世界資本主義再構築」と日本の好位置
【ストラテジーブレティン(371号)】
謹賀新年
良き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
期待に胸が膨らむ新年、皆様のご健闘をお祈り申し上げます。
令和7年 元旦
株式会社 武者リサーチ
(1)何故、強い米国が必要かつ必然なのか
歴史的転換を推進する二つの力
10年後を考えると、世界のシステム・経済主体が、今のままで存続し続けることはないだろう。今の世界を突き動かす二つの力が、すべてを押し流していくと考えられる。その第一は専制国家を排除した世界秩序の構築、第二はAI革命の不可逆的進展による国際分業と各国の経済・産業構造の変容、である
専制国家排除の国際秩序、いずれ見えてくる
第一の力について。どこかの時点で、専制国家を排除した世界秩序構築が加速化するだろう。中国、ロシア、北朝鮮、イランなどの専制国家は袋小路を進んでいる。アサドシリアの滅亡に続き、ロシア・中国の経済的衰弱は避けられない。他方で米国では資本主義の蘇生が進展し、米国のプレゼンスは経済的にも政治・軍事的にも高まらざるを得ない。資本主義的世界秩序は米国主導で再構築が進められるだろう。トランプ氏の利己的にも見える「強いアメリカ再構築」に他国が従順にならざるを得ないのは、それ以外の選択肢がないからである。トランプ外交を米国の孤立主義、ナショナリズム回帰と見ることは間違っている。強いアメリカの復活は、世界秩序再構築の必須の条件である。
空前のAI革命、米経済優位を一段と強める
第二の基本的力について。空前のAI革命は国際分業(各国の相互依存関係)の再構築、及び各国経済・産業構造の大転換を必然的に引き起こすだろう。技術革命のスピードは驚異的である。我々はムーアの法則(半導体では18ヶ月で2倍と言う集積度(=生産性)の向上が40年にわたって続いている事)が、現代経済の枠組みを根底から変えてしまっていることを痛感している。しかし今進行中のAIの基本構造であるニューロネットワークは、ムーアの法則以上のペースでの指数関数的生産性の向上(=損失の低下)を引き起こしている、と言われている。これをスケーリング則と言い、AIが応用されるすべての分野において、それと類似の劇的な変化を引き起こすことが想定される。ほぼ1000億個に上るニューロン(脳細胞)が1ニューロンあたり1万個のシナプスでつながることにより、人類の知能は飛躍的に高まった。AIデバイスは演算素子がヒトの脳に類似したネットワークで連携されることにより形成され、並列処理と高速化を可能にした。半導体と異なり、AI実装はあらゆる人間の頭脳労働の場面で実装可能なので、生産性上昇は広範囲な分野で実現していきそうである。それは自動的に供給力を高め潜在成長率を引き上げていく。