高市総裁ならアベノミクス相場の再来へ
【ストラテジーブレティン(364号)】
鍵となる経済政策で圧倒的優位の高市氏
事実上日本の次期首相を決める自民党総裁選(9月27日)が、一週間後に迫っている。今回の総裁選挙は派閥解消後初で9名が立候補し、大混戦になっている。各候補の主張にも大きなコントラストがみられ、国民には投票権はないが、ネット、SNSを巻き込んで国民的政策論争を引き起こしている。
どの候補者も一回目の投票で過半数を獲得できず、上位二名による決選投票となることはほぼ確かである。しかし様々な世論調査から、決選投票に残るのは石破氏、高市氏、小泉氏の3氏に絞られてきたようである。その場合決戦に残らなかった候補者を支持していた党員、議員票がトップ2のうちどちらにつくかで勝者が決まる。決選投票は国会議員の367票と、都道府県の各代表の47票の構成なので、国会議員がどちらを支持するかで大勢が決まる。そして次期総裁は年内解散総選挙を打ち出すことが既定路線と見られているので、自民党国会議員は次期選挙に勝てるアジェンダ設定が総裁選びに決定的に重要になる。となると経済政策の優劣が雌雄を決する要素になる可能性が高まる。
そこでチャットGPTに決戦に残る可能性がある3候補のうち誰が株価に最もプラスに働くか、を聞いたところ「最も株価にプラスに働く可能性が高いのは、高市早苗氏と考えられます。彼女の積極的な金融緩和策や財政出動の姿勢は、アベノミクスの延長線上にあり、投資家にとって短期的な安心感を与え、株式市場を押し上げる可能性があります。小泉進次郎氏は、グリーン政策の推進で特定のセクターにプラスの影響を与える可能性があるものの、市場全体の反応は規制強化のリスクなどで不透明です。石破茂氏は、長期的な構造改革を重視するため、短期的な株価上昇にはつながりにくいですが、地方経済や特定産業にはポジティブな影響があるかもしれません」との回答となった。この見方は筆者を始め大半の専門家が共有する見解である。
充実した稼ぐ力をいかに家計に回すか
日本経済がデフレ脱却の正念場を迎えた時に、石破氏と小泉氏が経済政策に適正解を持っていないということは驚きである。両氏は経済政策の設定段階で大きなミスをしてしまったと言える。両氏に任せておいたら、岸田政権の新しい資本主義・積極財政・アベノミクス路線からから、新自由主義・財政再建優先・金融規律重視の反アベノミクス路線に変わるリスクが高まる。
2013年のアベノミクスから10年を経て、打ちひしがれていた日本の稼ぐ力は、大きく向上した。日本人が稼ぐ所得総額(名目GNI)は647兆円、前年同期の630兆円比2.7%増、前々年同期の593兆円比9.1%増と鋭角的に拡大した。円安インフレの進行と、日本企業のグローバル化による海外利益急増に支えられている。名目経済成長に連動する企業利益は2.2倍、株式時価総額は3.3倍、一般会計税収は1.6倍になった。
しかし他方で個人生活が取り残されてきた。実質個人消費支出は、過去10年間では、2014年3月の消費税増税(5➡8%)直前の2014年1~3月がピークで、その後一度もそれを上回っていない。この好調な業績・株価と低調の実質消費との乖離をどう埋めデフレ脱却を確実にするか、物価と賃金がともに上がる経済の好循環を実現するか、今はまさに正念場となっている。