プーチンのウクライナ侵攻、ロシア凋落の始まりか

【ストラテジーブレティン(300号)】

プーチン氏の緒戦でのつまずき
ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切って1週間が経ち、両代表団によってベラルーシで停戦協議が行われている。刻々変化する戦況を判断することは危険ではあるが、電光石火の攻撃により緒戦で勝利し、ウクライナ側に①非武装中立化、②クリミア半島の主権譲渡、を飲ませるというロシアの目論見はうまくいっていないようである。傀儡政権の樹立も今では難しくなっている。

誤算はウクライナの士気とドイツの政策大旋回
誤算の2大要因は、ウクライナ側の士気が高く抵抗が強いことと国際世論のロシア批判の高まりである。SNSで全世界に伝えられるゼレンスキー大統領の英雄的抵抗と国民の愛国心の高まりは、国際世論を味方につけ、ロシア批判の共同戦線とも言えるような雰囲気を作っている。その中で特筆されるのは、EUをリードするドイツ・ショルツ政権の政策大旋回である。ロシアによるウクライナ侵攻直後の2月28日、ドイツ議会の特別セッションにおいて、1000億ユーロの軍近代化予算と、軍事予算の増額(対GDP比1.5%~2%)が表明された。また北海ルートのパイプラインノルドストリーム2の棚上げも打ち出された。さらにロシアの国際決済システムSWIFTからの排除、ミサイルと装甲車のウクライナへの援助、石炭と天然ガス備蓄の増強、カタールと米国からのLNG受け入れターミナル2つの建設などが緑の党の同意のもとに打ち出された。2022年に全廃が決まっていた原発の運転延長や廃止原発の再稼働なども俎上に上ってくるかもしれない。

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