米中デカップリングは可能なのか
【ストラテジーブレティン(295号)】
トランプ氏の価値観に基づく中国共産党 対抗姿勢堅持
バイデン政権が発足してから11カ月が過ぎ、対中政策でトランプ政権時とは違った面も目
立つようになってきた。民主主義対独裁専制という価値観対立の観点はトランプ政権とは変わらない。しかし外交面で中国を包囲する動きはトランプ政権よりは踏み込んだものとなっている。インド太平洋地域への関与強化は、AUKUS(米英豪による軍事技術共有)、 Quad(米日豪印戦略対話)などが相次いで開催され、各種のイニシアティヴが打ち出された。アフガン撤退も中国を睨んだアジア太平洋地域への注力が狙いである。さらにバイデン政権は強制労働に代表される人権問題に力を入れている。3月にUSTRは、新疆ウイグル自治区での人権侵害を最優先課題に挙げ、同自治区産の綿・トマト製品輸入を全面的に停止した。また6月には太陽光パネル関連製品の輸入に一部制限を導入している。
米中協調場面の演出も
しかし他方で、対中姿勢が軟化していると見える要素も多い。気候変動、軍事、貿易、安全保障などの分野で協議が再開されている。スコットランドにおけるCOP26での共同宣言、11月16日の米中首脳らよる衝突回避ルールづくりのためのオンライン会談など、協調の場面が増えている。
半導体サプライチェーンでの中国排除は全く機能せず
特に意外なのは、中国を排除した国際サプライチェーン(EPN)構築が、看板倒れになりそうな気配である。安全保障上の要請による①輸出管理、②対米投資審査の強化、③政府調達における中国品の排除などは、トランプ政権からの路線を踏襲しているとされている。しかし実際には半導体関連はほとんどデカップリングできていない。EUV(極端紫外線)装置等の最先端機器以外は、エンティティーリストに挙げられた企業への機器輸出の大半が認可されている模様である。WSJは2020年11月から2021年4月の間に米商務省はファーウェイ向け輸出許可610億ドル(認可率69%)、SMIC向け420億ドル(認可率90%)合計1000億ドル以上を許可したと報道している(10月22日付)。