コロナパンデミックの経済史的考察
【ストラテジーブレティン(263号)】
(1) 歴史の画期で起きたコロナパンデミック
歴史的転換点を示唆する4 つの事柄
100年に一度の金融危機(グリーンスパン元FRB議長)と評されたリーマンショックは、その後の順調な回復を振り返れば、大げさすぎた表現であった。しかし今進行しているコロナパンデミック下の経済において、われわれは100年どころか、もっと画期的な歴史的と言うべき事例に遭遇している。ざっと挙げただけでも、4つの歴史的変化が観測される。
変化①金利の歴史的低下
✓ コロナ前から進行していた金利低下はコロナでさらに下落、米国長期金利は歴史上最低を記録した(図表1)
変化②空前の財政赤字
✓ 主要国の財政赤字は対GDP比で見れば戦後最高となった(図表2)
変化③人類の基礎単位が組織でなく個になった
✓ 大半の人的接触がネット・クラウド経由となったことで、組織が最小の経済単位ではなくなった(図表3)
変化④労働・教育などの編成が激変、Work Life Balance が必至に
✓ 物理的な集合労働、集合教育の時代が終わりつつある、リモートワーク、フレックスワーク、が常態化し、労働時間が劇的に減少、労働と消費の境界があいまいになっている。ドラッカーが言ったプロシューマーが見えてきた。1919年創設のILO一号条約、週48時間労働が100年経っても達成されていない。100年で10倍の労働生産性上昇にもかかわらず、人類の労働時間は殆ど変わっておらず、生産と消費のバランスが著しく崩れてしまった。コロナパンデミックによる労働編成の劇的変化は、100年分のWork Life Balance(労働時間vs. 消費時間) を是正するものになるだろう。