日本を蘇生に導くハイテク大ブーム
~米中対決のカギを握る半導体、言わば現代の石油~
【ストラテジーブレティン(256号)】
(1) 攻勢を強める中国
香港国家安全法では国際世論分断に成功
米中対決は香港の一国二制度の崩壊で決定的となった。現世界情勢の特徴は「中国の一方的攻勢」であろう。インド国境、南シナ海、東シナ海・尖閣列島では周辺への威圧を強めている。国内では国際世論の批判に耳を貸さず、新疆ウィグル自治区、チベット、内モンゴルで民族同化政策を推し進めている。いち早くネットデジタル社会化に成功し、水も漏らさない監視システムを敷き詰め、言論統制が一段と強化されている。世界がコロナで苦境にある期に乗じて一気に攻勢に出ていると観測される。対中批判を止めないオーストラリアやカナダに対しては経済制裁により報復する。
香港国家安全維持法導入に際しては、施行直前の6月30日に、英国の在ジュネーブ国連大使が主導し、オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、スイスなど27カ国による抗議の共同声明が発表された。「一国二制度により保障されている高度な自治と権利、自由を害する、中国に再考を求める」との内容である。しかし、同日ジュネーブの国連人権理事会で、キューバが53カ国を代表して支持を表明した、と新華社は伝えている。国際世論の分断に成功している。
サラミスライス戦略の先に台湾が
中国の次のターゲットは台湾である。一国二制度はそもそも台湾を包摂する戦略として構想されたものである。米国も認めている「台湾の主権は中国にあり」(「ニクソン訪中機密会談録・増補決定版」名古屋大学出版会)、との主張に依拠すれば、台湾の香港化はいつでも起こり得るし、それを中国は正当化できる。南シナ海や香港で少しずつ地歩を拡大しやがて全域を支配下に抑えるというサラミスライス戦略が見事に奏功しているが、中国は更に戦線を広げてそれを試している、と見られる。