コロナパンデミック中間総括

2020/05/29

【ストラテジーブレティン(252号)】

 

日経平均株価、NYダウ工業株は、2~3日でそれぞれ1000円、1000ドルという急騰を繰り返す局面に入ってきた。すでにコロナショック後ほぼ4割の暴落から、半値戻しを達成しており、半値戻しは全値戻しの格言通り、本格的上昇場面に入った可能性が濃厚である。武者リサーチは、コロナパンデミックによる暴落は、日本株式長期上昇のステップボードになる可能性が大きいと考えてきた。その根拠は6月10日に発売される、『アフターコロナ、V字回復する世界経済』(ビジネス社)に詳述している。以下はそのはしがきである。

武漢だけだと思っていたコロナ感染が瞬く間に全世界に蔓延し、医療崩壊はイタリア、米ニューヨーク州など先進国を直撃した。全世界の被害は感染者数500万人、死者数30万人と発生源の中国の70倍に達し、最悪シナリオをはるかに超えたパンデミックの展開であった。世界的に経済活動がほぼ停止状態になり、あらゆる経済指標は戦後最悪、失業率は大恐慌以来最高になった。この新型コロナは感染力が著しく強く、ワクチンの完成、集団免疫獲得までは、Withコロナの時代が続く。あと半年から最長で3年、この間経済の完全回復は困難である。人的接触を回避しながら恐る恐る経済活動が再開されても、第二波、第三波の流行が起きその都度活動は圧迫される。

世界株価はコロナ感染勃発後に4週間で4割という史上最速ペースの暴落となった。しかしその後2週間で下落の半値戻しを達成、これまた史上最速の戻りであった。フィナンシャルタイムズ等経済ジャーナリズムは、この株価の急回復はユーフォリア(多幸感)で持続性がないとキャンペーンを張っている。エコノミスト誌は「ウォールストリート(株価)とメインストリート(現実の経済社会)の危険な断絶」という特集(5/9-15日号)で、楽観を戒めている。先進国の感染者数は3月末でピークを打ち、経済は戦後最悪の低水準から上向いて来ている。米国はじめ各国政府・中央銀行は禁じ手を連発して財政・金融救済策を打ち出し、経済金融の崩壊を防いでいる。これが市場に安心感をもたらしているのである。手放しに楽観できる状況にないのは言うまでもないが、当局も報道も専門家も、ことさらに楽観しないようにバイアスをかけていることも事実である。経済と市場はもっと合理的であるはずである。

リーマンショック後しばらく鳴りを潜めていた悲観論者が、「だから見たことか」とばかりに登場し、憂鬱なムードを更に暗くしている。悲観論の根底には、リーマンショック後の経済成長は禁じ手政策の連発による砂上の楼閣であり持続性はない、という大局観がある。コロナパンデミックは、いずれ下されるべき審判を速めたに過ぎない、というわけである。

これに対して武者リサーチははっきりと、長期経済ブームの波は終わってはいない、コロナの後は再度上昇の波に戻ると主張したい。理由はコロナが歴史の流れを押し進めると考えられるからである。コロナパンデミックという世界的惨事が歴史の流れをせき止めていた障害物を一気に押し流し、長期的に経済成長率を高め、株価を押し上げると考える。

誰しも一番知りたいのは、今まで続いていた経済繁栄が終わったのか、それとも一時的に遮断されただけなのか、であろう。コロナが起きる直前までは世界経済はブーム状態、ネット情報通信革命が進展し、米国の失業率は3.5%と史上最低まで低下、株価はリーマンショック後10年間で4倍になった。この長期的経済ブームが続くとすれば、株価の鋭角的戻りは必ずしもユーフォリアとは言えない。むしろ大きく下落したところは絶好の仕込み時ともいえる。

 

>>続きはこちら(388KB)

株式会社武者リサーチ
武者ストラテジー   株式会社武者リサーチ
「論理一貫」「独立不羈」「歴史的国際的視野」をモットーに、経済と金融市場分析と中長期予想を目的とし提供していきます。
著作権表示(c) 2013 株式会社武者リサーチ
本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。本書および本書中の情報は秘密であり、武者リサーチの文書による事前の同意がない限り、その全部又は一部をコピーすることや、配布することはできません。

このページのトップへ