新型コロナウィルスと米国株高シリーズ①
国家資本主義 vs.株式資本主義

2020/02/17

【ストラテジーブレティン(244号)】

 

いま世界で二つの相反する事柄(Fact)が、焦点になっている。一つは新型コロナウィルスの蔓延で、生活者、ビジネスマンと投資家をパンデミックの恐怖で凍えさせている。あと一つの事柄(Fact)は米国の株高である。なぜこの二つの事柄にフォーカスするのかだが、それは米中国家対立問題解決の鍵がそこにあるからである。その分析の結果何が見えてくるのか、を3シリーズにわたってお届けする。武者リサーチの結論は米国の隆盛と中国の退潮である。

新型コロナウィルス蔓延下での米国株式史上最高値更新、MAGA主導
新年早々、イラン革命防衛隊ソレイマニ司令官殺害、新型コロナウィルス蔓延などのネガティブニュースが相次ぐ中で、米国株式は3指数そろって史上最高値を更新し続けている。「疾風に勁草を知る(逆境で真価が分かる)」、という故事にある通り、米国株式の地相場の強さをうかがわせる。2009年3月の底値6,547ドルであったNYダウは、2020年2月29,400ドルと、11年間で4.5倍、年率15%の株価上昇となった。トランプ大統領が当選して以降の3年3か月(39か月)で見ても1.64倍、やはり年率16%の上昇である。その牽引車がMAGA(マイクロソフト、アップル、グーグル、アマゾン)というハイテク革命の旗手でいずれも時価総額1兆ドル企業群である。トランプ大統領は自らのスローガン Make America Great Again になぞらえて、この4社をMAGAと呼ぼうと主張している。

この二つの事柄(Fact)は世界の将来展望を考える上で決定的な材料である。まず第一の事柄、新型コロナウィルス肺炎の蔓延によって中国国家資本主義の根本的欠陥が露呈された。新型コロナウィルス問題は、ソ連崩壊の導火線となったチェルノブイリ原発爆発に匹敵する、体制的転換点にすらなり得る問題である、との論評がなされている。また第二の事柄、米国株式上昇により、米国株式資本主義の隆盛が顕著である。コロナウィルス蔓延にもかかわらず高進する米国株式を見て、慢心した楽観論の現れとするシニカルな見方もあるが、後述する通り、それは合理的とは言えない。

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