アングロサクソン連合、世界秩序再構築の予感
【ストラテジーブレティン(240号)】
(1) トランプ・ジョンソン氏の保守自由主義革命
レーガン・サッチャー連携の再来か
1980年代初頭のレーガン・サッチャー時代をほうふつとさせる、異形かつ同質の保守政党リーダーが、大西洋を挟んで再度登場した。トランプ米大統領、ジョンソン英首相である。12月のイギリス総選挙でジョンソン氏率いる保守党が1972年のサッチャー政権以来の大勝、過半数を獲得しBrexitが確実となった。トランプ氏はこれに最大限のエールを送った。
両氏の性格、主張は驚くほど類似している。ポピュリストと形容されるが、経済合理性への信頼を強く持っており、左派の大衆迎合とは違う。①破天荒、常識・慣例に従わず、②利潤追求への忠誠・プロビジネス、③自由主義、規制緩和、④形式民主主義・理想主義に対する嫌悪、⑤国益重視、グローバル秩序の改変、⑥リフレ政策、⑦社会的弱者への共感、グローバル化の被害者に寄り添う移民抑制、貿易秩序の再構築・保護主義的外見、等である。
保守党大勝により指導力を強めたジョンソン氏は規制緩和、リフレ政策、米国・旧英連邦諸国や日本などとのFTAを推進し、トランプ大統領とともに、形骸化したグローバル秩序の再構築を打ち出すだろう。
レーガン・サッチャーが1980、90年代の新自由主義、規制緩和の世界潮流を生み出したように、トランプ・ジョンソン連携が、新しい価値観をもたらし、行き詰まった形式民主主義の世界秩序を立て直していくのではないか。米中の世界覇権をめぐる根底的対決が、米英主導で自由主義国家群を糾合させることになるだろう。
両氏の格差より規制緩和・ビジネス優先に重きを置く政策は、時あたかも進行するデジタル・ネット産業革命と親和性が強く、株式市場はそれを歓喜で迎えると思われる。株高が2020年の世界景気回復を確実のものにすると考えられるが、そうなるとトランプ・ジョンソン両氏の保守自由主義思想が正当化され定着していくのではないだろうか。
1980年代初頭リベラル派からは忌み嫌われたレーガン・サッチャーの登場が新自由主義の一時代を形成し冷戦を終結させたが、その繁栄を担保したのが1980年から始まった株価の長期的上昇であった。
トランプ大統領とジョンソン首相の連携による保守自由主義の登場が、株価上昇によって迎えられるとなると、それは世界経済の新たな繁栄の時代の始まりということになるのかもしれない。