真夏の夜の悪夢の検討
~長期好況の終わりか 、ミニサイクルの底入れか

【ストラテジーブレティン(230号)】

真夏の夜の悪夢、金融市場波乱
夏休みのさなかに金融激変、市場のムードが一変した。引き金は、8月1日に突如ツイートされたトランプ大統領の3,000億ドルの対中輸入額に対する10%関税で、期待されていた貿易戦争の合意の可能性が見えなくなってしまったことだ。真夏の夜の悪夢なのか、株、通貨、金利、金など、商品すべてを巻き込んで、金融市場の大波乱が展開されている。人民元は節目の7ドルを越えて下落し、円は独歩高、米長期金利急低下が株安を伴って進行している。夏休みの投資家不在の中で、思惑が市場をかき乱している。これが本格的危機の始まりなのか、一過性のものなのか。

一過性とすれば、ここから先は投資局面、株高、円安、債券安にベットする時期に入っていくだろう。金価格は?現在の金選好は地政学要因が大きい。ドル資産凍結時の代替手段、ドル売りの反対側にある金価格上昇ではない。

ミニサイクルの底入れ間近
全ては、現在が長期好況の終わりなのか、それともミニリセッションの底入れ局面なのかに依存する。ファンダメンタルズ面では、前者のリスクは小さいのではないか。米中関税競争だけなら、それによるネガティブな影響は限定的と見られる。米国経済は2009年以来、史上最長の景気拡大が10年にわたって続き、途絶える気配がない。中国経済もインフラ投資や不動産投資の促進策により、景気失速は回避されている。ただ、長期景気拡大の中でもミニサイクルがあり、貿易や投資はそれに従って変動している。最近では2015年春ピーク、2016年春ボトム、2018年春ピーク、2019年春ボトムとなっている。2018年半ばからのミニ後退は、スマホや自動車の買い替えサイクルでピーク感が強まっている時に、米中貿易戦争が勃発し、不透明感から多くの投資案件が棚上げされたことによって起こった。しかし今、買い替えサイクル一巡とともに、米中貿易戦争の不透明感も解消されている。貿易戦争は続いているが、全面対決は回避され、生産拠点の脱中国が必要となるなど、先行きの大方の目途は見えてきた。ミニサイクルは2019年秋口から年末にかけて反転する可能性が強いのではないか。

堅調な米景気、中国経済も底割れは回避可能、サプライチェーン変更は着実に進行、ASEAN、台湾では中国からの生産移転による好影響が加速している。

ドイツは失速気味だが、ECBによるさらなる金融緩和、財政出動など政策余地は大きい。

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