パウエルプットと株式本位制
~ 今が壮大な株価上昇の入り口だとしたら~

【ストラテジーブレティン(226号)】

(1) 事実上の株価本位制を示唆するFRBパウエル議長発言

パウエルプット炸裂、株価は大転換へ
株価急落のさなかのパウエルスピーチがまたまた、株価の大転換をもたらした。貿易摩擦に柔軟に対応し、予防的な金利引き下げの可能性を示唆した。まさに株式市場の守護神である。すでに下落傾向にあった市場金利は急低下し、イールドカーブは完全に逆転した。米国国債利回りは6月7日時点で、1ヵ月2.31%、3ヵ月2.28%、1年2.02%、2年1.85%、3年1.81%、10年2.08%となっており、1年内に3回程度の利下げが織り込まれたことになる。

武者リサーチはかねてから「インフレの鎮静化により、FRB の利上げの必要性がない、ということがはっきりしてきた。今のFRB は景気を拡大させ株価を維持するために、必要ならどんな手でも打てる状態である。量的金融緩和を再開することもできるし、利下げもできる。それをやったら直ちにマーケットは息を吹き返すと考える。なぜそれができるかと言うと、物価が抑制されているから。これをFRBによる過剰なマーケット支援であり、モラルハザードだ、バブル促進策だと言って批判する人はいる。けれども、インフレが抑制されている、つまりまだ供給力に余剰がある局面においては、需要の増加をもたらす金融緩和政策は間違っていない。それは、この間の一連の動き、株価下落→その後のFRBのスタンス変化→その後の株価急反発、によって証明されていると思う。」(Bulletin 218号1/21/19、219号1/29/19)と主張してきたが、想定通りの展開である。

QEを新金融レジームと認識し始めたFRB
しかし今回の発言は、それ以上の歴史的意味を持つ、威力の大きなものであろう。最重要のポイントは、量的金融緩和という危機対応の政策を、政策オプションの中心に据えたことである。パウウェル氏は中央銀行が直面している課題は低インフレがさらに進み、金利がELB(利下げ余地がなくなる限界水準=Effective lower bound)に達することであり、その際には量的金融緩和などのいわゆる「非伝統的金融政策」が必要になるとして、もはや非伝統的という言葉はやめるべきだ、と主張した(“Perhaps it is time to retire the term “unconventional” when referring to tools that were used in the crisis”)。

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