FM 今週のポイント(7月11日)
*ブレグジットの余波が大きな一週間でした。ドル円相場は再度100 円台に円高が進行、日経平均株価は15100 円台まで沈んでいます。リスクオフの背景はユーロ圏金融不安の再燃です。特にイタリアの銀行にマーケットの懸念が集中しているようです(7月末にECB による銀行資産査定(ストレステスト)の結果公表を控えている)⇒欧州議会の資料によると、イタリアの銀行の融資残高に占める不良債権の比率は2015 年9月末時点で16.9%と、EU平均の5.9%を大きく上回っています(回収不能債権の引き当て不足額は銀行システム全体で400 億ユーロ(約4.5 兆円)に上ると言われている)。とりわけ問題視されているのが、国内3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)。15 年末時点で42%と国内大手で最悪の状態です。イタリア政府は今年に入り、銀行が不良債権を証券化して売却する際の政府保証や民間による銀行支援基金の設立など、各種対策を打ち出していますが、抜本的な処理は遅々として進んでいません。こうした状況下、イタリアの銀行株指数は年初来6割下落しており、EU離脱を決めた6月下旬の英国民投票後には売りが加速し、モンテ・パスキ株に至っては年初来8割安を記録しています(英国民投票後には50%急落)。今年1月に始まったEUの銀行再生破綻処理指令(BRRD)では、税金を銀行救済に用いることへの批判や、「銀行危機」と「財政危機」の負の連鎖を断ち切る目的もあり、公的資金を注入する前に、銀行の株主や債券保有者などが銀行負債の8%相当の損失負担(ベイルイン)を求めています。イタリアの銀行債は機関投資家だけでなく、多くの個人投資家が保有している模様で、イタリア政府は個人投資家にベイルインを求めることは政治的にほぼ不可能と言われています。それならばベイルインを一時的に凍結して公的資金投入しか道は無いわけですが、ドイツが反対していることは言うまでもありません(ギリシャ危機初期の状況に似ている)。イタリアとドイツの軋轢が高まれば、英国に続いてイタリアも、との連想も働き、世界のリスクマーケットはイタリアの不良債権問題に身構えているわけです。
*しかし、リーマン・ショック、ユーロ圏債務危機の教訓は生きているはずです。また、リーマン・ショック後、主要中央銀行は超過剰流動性を維持することで金融システムの安定性を確保してきました。今までの努力を水の泡とする大規模金融機関の破綻を選択できるはずはありません(リーマン・ショックが発生した直接の原因はリーマンを破綻させたことにある)。今回の欧州金融不安も2月の危機時同様、短期的に収束していくものと思われます。
*週末注目された6月米雇用統計と参院選はどちらも日本株式市場にとってフォローになりそうです⇒短期的に過度な円高進行が回避されると思われます。非農業部門雇用者数は予想の17 万5000 人を大幅に上回る28 万7000 人となり、ひとまず雇用統計ショックを回避しました。参院選は与党で過半数を大幅に上回る結果となり安倍政権の政治基盤強化につながりました。7月末にかけて、大規模で効果的な経済対策が打ち出されることを期待します。
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