FM 今週のポイント(8月17日)

2015/08/17

*先週のハイライトは人民元の突然の切り下げでした。11、12、13 日と連続して通算約5%の基準値の切り下げです。中国経済は1Qから一段と減速し、6月後半以降の株価の乱高下を受け、ダウンサイドリスクが一段と高まっており、政策当局は財政投融資策の拡大など景気対策を強化していました⇒今回の人民元切下げも、そうした景気対策の一環と見られます。人民元は、事実上、米ドルに連動しているため、FED の利上げ観測からドルが他通貨に対し上昇⇒貿易加重平均で見た人民元の実効レート(BIS)は、景気減速にも拘らず増価傾向が続いていました(実効レートを見ると、景気減速の始まった昨年8月に比べ、名目で11.0%、実質で11.4%も上昇し、内需の低迷に加え、輸出の重石となっていることは間違いない)。今後のFED の利上げによってドル高がさらに進み、それに連動する人民元の実効レートが一段と高まることを回避することも今回のオペレーションの目的の一つだと考えられます。あくまで実効レートの維持が目的だと思われますが、昨夏からの上昇を相殺すべく、累計で最大10%程度の実効レートの切下げを行う可能性があると当初は危惧されました(10 月の米中首脳会談、IMF のSDR 入り等を考えると5%程度が限界との見方も)(中国経済のハードランディングのリスクが高まる場合には、実効ベースで2割強(2010~2011 年の水準)まで切り下げる可能性もあると懸念された)。日本の輸出に占める中国の割合は18%、輸入は23%と大きいものの、競合する財はそれほど多くはないため、今回の人民元の切下げが、ドル高に伴う実効元レートの上昇を相殺する程度のものなら、日本の輸出入数量への影響は限定的であると思われます(円の実質実効レートは1973 年初頭に匹敵する水準まで減価しており、極端に高まった日本の競争力が若干抑えられる程度と思われる。ただし、韓国ウォン、台湾ドルに通貨安が広がれば、影響は多少大きくなる。)。元安でコスト負担が低下するケースもあると考えられます(アパレル、金属製品でのコスト抑制が注目される)。

*13 日に人民銀行が異例の記者会見を行いました。中国人民銀行の幹部が繰り返し強調していたのは、(1)基準値算出方法の見直しは為替レートの市場化改革が主目的で、意図的な切り下げを狙う意思はない、(2)中国人民銀行は、許容範囲を超える元安は容認しない、の二点です。一方、中国人民銀行の易綱副総裁は「元安を通じて輸出を刺激する必要は全くない」と強調しましたが、額面通りに受け止めることはできるのか、当面、制度変更後の基準値の設定及び市場レートの推移を見守る必要があると思われます。

*前述したとおり、今回の人民元切り下げは日本経済、日本企業に大きな悪影響を及ぼすものではありません。しかし、人民元切り下げを受けて日経平均株価は約400 円の下落を示現し、中国関連銘柄、インバウンド需要関連銘柄が大きく値を消してしまいました。人民元切り下げの背景が不透明であるためのリスクオフの進行、中国景況感悪化観測が大きくなったことが原因です。ただし、良く考えると今回の切り下げはQEを含めた本格的な景気刺激策発動の前触れだと想定されます。過度な中国関連株の下落は大きな投資機会と成りえます。

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