常温核融合への転換で急浮上する企業は?

2016/10/11

 
 「金融におけるシステム変更は、エネルギーにおけるシステム変更を必ず伴う」マーケットにおける有名な格言の一つである。例えば米ドルの金兌換が停止されたことによって生じたニクソン・ショック(1971年)と相前後して始まったのが中東でアラブ諸国らが起こしたオイル・ショックであった。

 そして金融セクターでは今、その根源的なシステム変更を促す動きが広がりつつあるのである。いわゆる「フィンテック(FinTech)」であり、その中核となっているのがブロック・チェーンという技術革新をベースとした「ビットコイン」などの仮装通貨の展開なのだ。金融セクターがそうである以上、エネルギー・セクターにおいてもその従来のシステムを根源から揺さぶる動きがまもなく出てきたとしても何ら不思議ではないのである。

 こうした観点から今、世界中で密かに、しかし熱い視線を浴びている技術がある。「常温核融合(cold fusion)」(※1)である。これは簡単に言うと、室温(=常温)で水素原子の核融合反応が発生することを指している。1989年にマーティン・フライシュマンとスタンレー・ポンズが共同記者会見を行ったことで一躍脚光を浴びた。

 しかしその後、アカデミズムは一斉に「そうした現象はあり得ない」として、この技術を事実上無きものとして扱ってきたのである。とりわけ熱心だったのがアメリカであり、連邦エネルギー省はこの技術の存在を繰り返し否定してきた(※2)経緯すらあるのだ。

 もっともそれで研究者たちが断念しなかったことも特筆に値する。「国際常温核融合学会」などを中心に引き続き研究が続けられてきたのであって、その成果は、決して表向きマスメディアによって語られることはないものの、着実に積み上げられたきたのである。

 そうした中でここに来て「潮目の予兆」とでもいうべき動きが出始めている。この「幻の技術」とされてきた常温核融合の存在そのものをまずは認め、かつそれが実用間近ですらあるといった報道がマスメディアによってなされ始めているのだ(※3)。もっともこうした動きに対して、これまで長年にわたって常温核融合に取り組んできた研究者たちは不信感を隠さない。「これまで一切黙殺されてきたのに、なぜ今になって」というわけである。

 常温核融合の分野で最先端の研究を行っているのが我が国であることは一般にほとんど知られていない。その成果は実に目を見張るものであり、エネルギー効率で見ると実に「44倍」なのだという(関係者談)。すなわち投入したエネルギーに対してその44倍ものエネルギーが噴出するというのである。しかも常温核融合は半永久的な反応であり、かつ小型化が可能であることでも知られている。「日の丸常温核融合」が世界の歴史を一変させる威力を持つことは誰の目にも明らかなのである。

 そうした状況を踏まえ、「最近、アメリカ当局から研究中止の要請が舞い込んできた」(関係者談)のだという。アメリカではDARPA(国防高等研究計画局)が2011年度より常温核融合関連の研究開発計画に対し、あからさまに予算計上してきている。しかし、そこでの開発レヴェルは我が国のそれには全く及ばないのである。そのため、まずは「協力するか、中止するか」を迫ってきたというわけである。ちなみに気骨あるこの研究者はその場で「お断りした」のだという。

 常温核融合の研究を行っていることで広く知られている我が国上場企業であるのが三菱重工である。しかし同社は「アメリカにおける原発賠償訴訟」や「MRJを巡るトラブル」など、ここに来て様々な困難に見舞われており、状況打開のため、不動産子会社の売却を決定する旨報じられたばかりである(※4)。そうした中で同社が世界に先駆けて研究開発を行ってきた「虎の子」常温核融合技術の行方が気になるところである。

 金融メディアでは今、「ドイツ銀行破綻の危険性」があからさまに語られ、「第2のリーマン・ショックの到来」すら危惧する声すら聞こえてくる。だが仮にそれが重大な契機となって金融システムの大転換が生じるのであれば、「コインの裏表」の関係にあるエネルギー・セクターにおいてもまた、大転換が生じるはずなのである。それではその時、圧倒的な勝者となるのは一体、どの企業なのか。エネルギー転換を巡る隠されたゲームから目が離せない。

※1 https://goo.gl/VLkT8l
※2 http://newenergytimes.com/v2/government/DOE/DOE.shtml
※3 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO06252800Z10C16A8000000/
※4 http://www.asahi.com/articles/ASJB701NRJB6ULFA03L.html

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