AIを活かして先端を走る~ファナックとプリファードネットワークスの連携

2019/01/15 <>

・11月の世界経営者会議で、ファナックの稲葉会長(CEO)とプリファードネットワークス(Preferred Networks)の西川徹社長(CEO)が対談した。ファナックはスマート工場へ知能化を進めている。

・西川氏に出会った時、オーラがあったと稲葉氏言う。西川氏は、ファナックが出資してくれた後、経営者としての覚悟が決まり、協業をベースに独自の事業を本格化させた。

・ファナックは、売上高7200億円、営業利益2300億円で、従業員8600人(日本人3700人)の会社である。1972年に富士電機から分社化した。

・社内ベンチャーの形であった。コンピュータは富士通が担うことになったが、工作機械向けの制御機器(コントローラー)は本業というほどでもなかったので、独立した。

・現在は、工作機械用のNC装置(CNC)を月産3.5万台、ロボットを7000台、ロボマシンを3500台ほど生産している。その9割が日本以外に設置されて使われている。

・世界に263のサービスオフィスを持ち、CNCの設置台数410万台は世界№1である。ロボットも60万台が稼働している。

・これらの装置のAIによる知能化に向けて、プリファードネットワークス(PFN)と連携することにした。

・PFNは2014年の創業で、AIのマシーンラーニング(ML)やディープラーニング(DL)の産業への応用を展開している。この分野では先端を走っており、大型ベンチャー企業として注目されている。

・産業用ロボットでのAIサーボチューニングや、ライフサイエンスにおける癌の診断におけるDLの応用などを手掛けている。

・最近は、パーソナルロボットにも進出し、展示会などでは全自動お片づけロボットが話題を集めている。形を認識して、さっと移動させるディバイスコントロール(IoT×ML)がカギを握るからである。

・西川氏は、子供の頃は引きこもりタイプで、小学生の時からコンピュータのプログラミングを書いてきたオタクであった。ファナックの工場を見て、ヒトがいない高度な全自動ラインに驚いた。

・ロボットは正確ではあるが、どうしたらフレキシブルになるか。ヒトは不確かなことも判断して作業を行う。システムとしては、クラウドではなく、エッジでどう対応するかがテーマであった。

・情報をクラウドに集結して判断するのではなく、それぞれの現場(エッジ)で、エッジコンピューティングとして処理する。クラウドでは遅いので、高速、確実にするにはエッジが重要である。エッジをAI化できれば、高性能、高精度が実現できる。

・ファナックは、その時PFNに出会い、協業することにした。従来の制御システムでは、調整すべきパラメータが多いとうまく最適化ができず、発散してしまうこともある。一方、ヒトはチューニングを一定程度できる。

・これを真似できないか。DL(ディープラーニング)なら、パラメータが多くてもリアルタイムでコントロールすることができる。シミュレーションの精度が上がって、工場がソフトウェア型(スマート)になっていく。これによって生産性は一段と向上する。

・ファナックは、今まで単体の装置(細胞)の性能を上げてきた。生物は多細胞でそれがつながって高度な機能を発揮している。そこで、つないで見える化していくことを目指した。

・そのためにビッグデータ(BD)を活用して、ヒトを超えて新しいことができないか。このつなぐシステムをプラットフォーム化して、世界を新しい形でリードしようという構想である。

・すでに単細胞では世界№1である。これをつないで、新しいビジネスモデルにトランスフォームしようとしている。

・中国企業がロボットでは力をつけている。しかし、今のところ日本が先頭を走っている。エッジの強さに、足らなかったAIが入って、リードできれば、世界の先端を引き続き走れるとみている。

・ファナックもML(マシーンラーニング)の応用を自ら開発していた。しかし、今1つ精度が出なかったので、個別のチューニングが必要であった。ところが、PNWのDL(ディープラーニング)を応用したら、精度が出てきた。

・PFNとしても、AIでグーグルの後を走るのは避けたい。独自の領域で世界の先頭に立ってリードしたいと構想した。

・大企業と組んでも下請けにはならない。あくまでも、パートナーであるという気概で、 ①応用開発、②基礎研究、③基盤構築に力を入れている。日本に数少ない大型ユニコーンとして、注目度は一段と上がっている。

・日本のものづくりは、ハードとソフトの微妙なすり合わせ技術で優位性を発揮してきた。ヒトの職人的よさを、チームプレーで発揮する。

・これは活かしつつ、ものづくりのプロセスにAIを入れ、新しい製品・サービス作りにAIを活かすことが、差別化にとって重要である。ここでリードしないと、ものづくりの競争力は落ちてしまう。

・一方で、人材は足らない。どうするか。西川氏はプログラミングの教育をやっていくしかないと強調する。稲葉氏は、優秀な人材はいる。これをAI時代に向けて育てればよい、と言う。

・イノベーションのカギは、経営者のリーダーシップにある。①まずやる、②恐れない、③恥を気にしない、④立ち直りが早い、というのが本物のリーダーシップのベースである、と鼓舞する。

・稲葉氏は、Learn or die、壁を壊して学び合うべし、と提言する。これにはエネルギーがいる。そのエネルギーを1)自らの情熱として、2)失敗を恐れずに発揮する。西川氏は、30歳を超えて、これを自覚したと語った。

・ファナックの次なる世界戦略と、PFNのAI成長戦略に大いに期待したい。

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