ヒトを見極める投信

2018/07/17 <>

・6月に野村證券のセミナーで、レオス・キャピタルワークスの藤野社長(CIO:チーフ インベストメント オフィサー)の話を聴いた。テーマは「成長企業を見極める投資家の目線」であった。今や日本最大の日本株のアクティブ投資信託を育て、運用パフォーマンスでも高い成果を出している。藤野氏が強調した投資のポイントを取り上げてみたい。

・藤野英人氏は50代、30年の運用経験を有するファンドマネージャーである。レオスとは古代ギリシア語で“流れ”を意味し、よりよい社会を創る資本の流れを興したいという願いを込めている。主力の「ひふみプラス」投信は、2018年にリッパーで最優秀ファンド賞、R&Iで優秀ファンド賞などを受賞している。

・伸びる企業は「ヒト」で見極める、と強調する。足で稼いだ情報で成長企業を発掘する。企業業績の変化に着目する定量調査と、ヒトの可能性に着目する定性調査を両面から行う。とりわけ、経営方針や戦略など、数値に表れない部分を重視する。経営者、ビジョン、製品、現場の声など、企業活動を支えているヒトに注目する。

・長期的な株価の伸びは、企業の利益の伸びと一致する。利益を伸ばす会社を見極めるには、ヒトを見ると強調する。つまり、企業への投資はヒトの可能性に投資することを意味する。①機械を動かすのも、技術を磨くのも全てヒト、②とりわけ、働くヒトを率いている社長の考えが重要、③そして、経営者と社員がいきいき働いていること、が決め手である。成長企業は、業界で決まるわけではなく、あくまでも企業次第である。

・では、どんな経営者に着目するのか。1)意思決定がシンプルで、2)目線が長期で、3)徹底した顧客目線であることを重視する。その逆、判断が複雑で、短期で、自社都合の経営は評価しない。そこで、オーナー経営者、あるいはオーナー型でなくても強烈なリーダーシップの発揮する経営者が率いている会社に投資することを信条とする。

・そう言われると、①なるほどすごいと思うか、②それは当然ではないかと思うか、2つのタイプに分れよう。投資哲学が明快で分かり易いので、当たり前と思うかもしれない。しかし、それを実践してパフォーマンスを上げ、実績を積み上げて日本でトップクラスの投資信託を育ててきたことは素晴らしい。

・6月末の運用資産は、ひふみ投信(直販)1456億円、ひふみプラス(販社経由)6109億円、ひふみ年金164億円である。3タイプの総額はマザーファンドとして7700億円を超える。

・ひふみ投信のマザーファンドをみると、今年5月末で229銘柄を組み入れている。その株式の資産構成比は、グロース(成長重視)77.7%(169銘柄)、バリュー(割安重視)22.3%(60銘柄)であった。また、内外比率では、国内株61.1%、外国株38.9%であった。

・2018年4月までの7カ月間でパフォーマンスへの寄与度をみると、上位から、①共立メンテナンス、②AMAZON.COM、③東京センチュリー、④カチタス、⑤GMOペイメントゲートウェイ、⑥SBIホールディングス、⑦ネットワンシステムズ、⑧SGホールディングス、⑨ユニー・ファミリーマート、⑩光通信であった。

・こうみると、中小型株への投資イメージが強いが、企業規模にとらわれることなく、柔軟な運用に力を入れている。実際、組み入れ上位銘柄は、局面によって大きく変化している。

・投資には時間が必要、投資には我慢が必要なので、今ここから投資して儲かるかを見ていく。簿価でなく常に時価を見て、ダメだと思ったら、株価が3分の1になっていても売る。良いと思ったら株価が3倍になっていても買うという。

・藤野氏は、いい会社を持ち切ることが大切であると強調する。株価10倍をとるには売らないことである。深く大きく儲けるには、会社を理解して投資することである。

・財務情報も重要であるが、結果の数字は現実よりも遅れるので、非財務情報を重視する。中でも企業を支えるヒトに注目して、ヒトが関わる活動を現場に足を運んで見ていく。とりわけ、経営者のリーダーシップに注目し、意思決定の力を評価する。ここに、ひふみ投信のパフォーマンスの源泉があろう。

・今後AIが大いに活用されるようになるとしても、藤野流に対抗できるとは思えない。AIは利用すればよいだけの話である。しかも、AIは頻度の高い情報を学習していくので、長期の経営を見る時に直接活用できるわけではない。

・中小型株から大型株へ、国内株から外国株へ、ポートフォリオの枠を広げて、運用資産の大型化に対応している。大型になるとインデックス化するのではないか、という懸念に対して、長期投資でαがとれる銘柄は山のようにあるので、全く心配していない。

・一貫してグローバル調査に力を入れている。世界中に出かけて企業を見ている。世界で起きていることは、いずれ日本でも起きるとして、銘柄発掘のアイデアとする。同時に世界の成長企業に投資すれば、先行できることになる。日本株に軸足を置きながら、グローバル投資を目指すひふみ投信に大いに注目したい。

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