変なホテルから変なレストランへ~ロボットの活用

2016/11/14 <>

・ハウステンボスの話を聴いた。ロボットを活用したHenna Hotelが近く2件目をオープンする。ハウステンボスがHISグループの傘下に入って6年、ハウステンボスは順調に集客力を高めている。年間来客数は15年ぶりに300万人を超え、次は過去のピークを抜く400万人を目指している。

・来客の地域別構成は、九州からが6割弱、関東・関西が3割強で、海外からは7~8%に留まる。地元の長崎県の人口は年1万人ペースで減っており、現在138万人。高齢化が進んでおり、働き手を集めるのにも苦労している。

・東京からハウステンボスに行くには片道4時間、しっかり遊ぶと一人10万円はかかる。ソウルや台北の方が安いともいえる。そういう環境の中で、ハウステンボスはどう経営を展開するのか。戦略目標は、Only 1かNo.1を目指すことに決めた、と高木専務は話す。誰もやったことのないこと、誰も見たことのないことに徹する方針である。

・しかし、会社としては過去に2回、実質的に潰れているので、キャッシュフローベースの経営から逸脱はしない。つまり、償却負担の重い大型投資はやらない。2~3年で回収できるイベントに軸足を置く。そのイベントで変化を見せて集客していく、という方針である。

・6つの王国で特色を出している。①花の王国、②光の王国、③ゲームの王国、④音楽とショーの王国、⑤健康と美の王国、⑥ロボットの王国である。光の王国では1300万個の球を使い、イルミネーションで世界 No.1となった。ここで働く仲間は全員マルチタスクを担う。歌ったり、踊ったりすることもできるだけ自分達でやる。

・2017年に開業25周年を迎える。もともとはオランダの街並みづくりからスタートしたが、今やオランダにはこだわっていない。街並みを見るなら10万円でオランダに行けてしまう時代である。そこで、テーマパークを軸に、観光ビジネス都市を目指す。この地に来てもらうと同時に、ハウステンボスで培ったノウハウやビジネスモデルをベンチャーと組んで、長崎の外に出ていく。事業としては、テーマパークのほかに、①ロボット、②農業、③電力などの事業を視野に入れている。

・ハウステンボスのロボット活用は面白い。働き手が少なくなるので、ロボットの活用はサービス業にとって必須である。しかも、ハウステンボスは私有地なので、その中でいろいろ試しながら、スピーディにアイデアを固めていくことができる。会社のモットーは、アジャイルで、とにかく素早く実行に移すことである。

・アジャイルの基本は、価格競争からの脱却にある。コスト削減だけでなく、新しい価値を作る。同時に、働くスタッフが楽しくなるようにすること、と高木氏は強調する。アジャイルがモットーなので、ハウステンボスでは長い企画書はいらない。簡単な資料で、沢田会長、高木専務、担当者が集まってさっさと決めていく。さらに、スタッフには早く歩けと言っている。ハウステンボスは広い。移動する時間を短くするという身体活動からスピード感を養おうとしている。

・私有地なので、許認可不要の特区のような活動ができる。例えば、ドローン、セグウェイのようなエアホイール、スマートごみ箱なども自由に用いることができる。ドローンは空飛ぶ自撮棒、エアホイールは自動道案内付き移動ロボット、スマートゴミ箱はセンサー着きゴミ圧縮機である。スマートゴミ箱をおくと、スタッフがすべてのごみ箱を一律に回る必要がない。IoTの応用なので、ゴミがいっぱいになったゴミ箱にだけ行って、回収すればよい。無駄が減って、生産性は大きく上がる。

・変なホテルは、世界初のロボットホテルで、ギネスブックにも載った。ホテルの人手をいかに減らすというところからスタートした。従来なら30人かかるところを、現在は9人で対応しており、さらに少なくできるという。70室、2棟をこの人数で賄っている。

・フロントロボット(日英中韓4カ国語対応)、クロークロボット(産業ロボットの応用)ポーターロボット、コンシェルジュロボット、芝刈りロボット、窓ふきロボットなど色々入れている。フロントロボットの利用で、チェックイン手続きに要する時間が早くなったという。なぜか。ロボットなので、客はフロントでいろいろ余計なことを聞かなくなった。必要なことは案内や標示にすべて出ているので、手続きがスムーズにいくとは面白い。

・コンシェルジュロボットは、音声認識の精度がまだ十分でないので、今後とも改善の余地があるという。顔認証システムでキーレスにしたが、小さい子供の場合、背が低いので認証の精度が不十分な場合がある。燃料電池の活用実験など、新しいことにも挑戦しやすい。オープンして7年、ノウハウも溜まって、実用化ができてきたので、舞浜に変なホテルの2号店を出すことにした。

・次に、変なレストランの実験も行っている。省人化を目指して、調理ロボット、AIコンシェルジュ、に取り組んでいる。調理ロボットでチャーハンを作る。ドーナツロボット、ソフトクリームロボット、コミュニケーションロボットなどさまざまである。見せることで楽しむ。実際にそれぞれのロボットで料理したものを食べる。そのレベルは日々向上しているという。

・高木専務は、問題は必ずおきるが、まずやってみることと強調する。サービスロボットを実際に使ってみて、改良していく。例えば、追尾ロボットというものを考えたが、これは今パレードに使っており、応用範囲も広がっている。

・地産地消をベースに、広大なハウステンボスで世界一生産性の高い農業を目指し、そのための農場を作る。ドローンやセンサーを活用する。太陽光、地熱でエネルギーの内製化を目指す。こうしたハウステンボスの新たなる挑戦は、そのこと自体が集客になる。ハウステンボスには、是非また行ってみたい。

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