ソニーはどんな会社になるのか~感動と好奇心の追及

2016/10/15 <>

・誰でもソニーを知っている。有名ブランドであり、エレキ(エレクトロニクス)、エンタメ(エンターテインメント)、金融を事業にしている。この10年をみると、少し前まで業績は低迷し、ソニーらしさはどこにいったのかと問われた。儲からない事業はやめたらどうか、テレビやスマホはどうするのか、と機関投資家に詰問された。

・そのソニーが復活し始め、中期計画も攻めに入ってきた。個人投資家には、どのように訴求するのだろうか。9月の個人投資家説明会に参加してみた。財務・IR担当の村上敦子執行役員の説明は簡明でわかりやすかった。

・前2015年度のソニーの売上高は8.1兆円、営業利益は2942億円、中期3ヶ年計画の1年目としては順調であった。エレキ分野はモバイル、ゲーム、カメラ、テレビ・オーディオ、半導体(イメージセンサー)、部品などの6事業からなる。エンタメ分野は映画と音楽の2事業であり、金融は保険と銀行である。

・これをセグメント別の営業利益でみると、1)モバイル・コミュニケーション-614億円(今2016年度計画50億円)、2)ゲーム&ネットワークサービス887億円(同1350億円)、3)イメ―ジーグ・プロダクツ&ソリューション693億円(同220億円)、4)ホームエンターテインメント&サウンド506億円(同410億円)、5)半導体145億円(同-640億円)、6)コンポーネント-429億円(同-120億円)、7)映画385億円(同380億円)、8)音楽873億円(同630億円)、9)金融1565億円(同1500億円)である。

・金融が最も稼ぎ、次にエンタメがくる。課題であったエレキ分野は、浮上してきたがまだ十分とはいえない。今2106年度をみると、スマホは黒字化してくるが、コンポネートは赤字が縮小するものの黒字化には至らない。熊本地震の影響で主力工場が被災し、強力であるはずの半導体は大幅な赤字となる。コンポ―ネントでは、収益的に厳しい電池事業を売却することにしたので、今後は黒字化してくることは想定できる。

・平井社長のもと、第1次の中期3カ年計画では構造改革に力を入れ、工場の再編や人材のリストラ、事業の取捨選択に取り組んだ。前2015年度からスタートした第2次の中期3ヶ年計画では、①利益の創出と、②成長への投資、に全力を投じている。

・中期計画の考え方は、高収益企業への変革を目指し、1)規模は追わずに収益性を重視、2)事業ユニットの自立と株主視点の重視、3)事業ポートフォリオとして、各事業の位置付けを明確化することにある。

・ソニーは、会社のミッション(使命)として、“感動をもたらし、好奇心を刺激する”ことを追求しつづける。創業者である井深大氏が起草した「会社独立趣意書」を根本理念として、1)創造と挑戦、2)自由闊達にして愉快なる理想工場、3)他社の追随を絶対に許さざる境地、4)いたずらに規模を追わず、を実践する。

・ソニーは創業70年を迎えた。創業者の薫陶がうすれてくると、会社の勢いはなくなってくる。変化への対応力も鈍ってくる。ソニーは過去10年の苦闘を経て、それを取り戻そうとしている。果たしてうまくいくのか。

・今回の3カ年計画の最終年度である来2017年度で、営業利益5000億円以上(2016年度3000億円予想)、ROE10%以上を目標とする。1年目はコンシューマエレキが回復し、テレビも10年ぶりに黒字化した。

・2年目の今期は、熊本地震の影響で半導体を中心に800億円の負担が発生する。また円高も会社全体ではマイナスに働く。それでも営業利益で3000億円を確保できそうである。但し、リチウムイオン電池は村田製作所に売脚するので、特別損失は出てこよう。

・スマホは、今期の販売台数が1900万台(前期2490万台)と減少するが、規模は追わない方針なので、収益性の改善を優先、黒字化を図ろうとしている。

・ゲームのPS(プレステ)4は欧米で人気があり、累計販売台数は4000万台を超えている。PSをネットワークでつないで楽しむPSプラスは、会員が2000万人を突破した。バーチャルリアリティ(VR)で臨場感があふれるPSVRも10月に発売される。ソニーグループのハード・ソフトが活かされており、新規事業としての立ち上げが注目できる。

・電子の目ともいわれるCMOSイメージセンサー(半導体)はシェア45%を有し、トップの競争力を誇る。今期は熊本震災の影響を受けたが、来期には大きく好転してくるものと期待できる。

・長期的な未来への布石としては、1)エレキ、エンタメ、金融を3つの軸として進化させる。2)エレキの場をさらに広げるように取り組む。壁に映せるプロジェクター。4Kを用いた画面がきれいな外科用の内視鏡、かつてのアイボ(イヌ型)・キュリオ(ヒト型)をしのぐAI(人工知能)とロボテックスを組み合わせた新しいヒューマノイドなどが注目される。

・ソニーのおもしろいサービス、楽しいロボットがどんな形で登場してくるのか。創業者精神を受け継いだ新しい事業展開に期待したい。個人投資家説明会では、筆者も質問してみた。ソニーコンピュータサイエンス研究所の社長である北野宏明氏(ソニー執行役員)は、世界トップクラスのヒト型ロボットの開発者であるが、ソニーのロボットはどんなものになるのか。‘それはこれから、ソニーらしさに乞うご期待’という内容であった。ぜひ注目したい。

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