女性の活躍、男性の改革~えるぼしに注目

2016/10/01 <>

・4月から「女性活躍推進法」がスタートした。女性の眠っている能力をもっと活かそうという狙いである。人口減少社会にあって、日本の経済力を維持向上させていくには、女性と高齢者にもっと活躍してもらう必要がある。活躍とは、自分なりにやりがいいのある仕事について、そこで大いに働いてもらうという意味である。

・振り返ると、1985年に男女雇用機会均等法ができて、女性の雇用機会は増えてきた。2015年において女性の雇用者は2500万人弱で、全体の44%を占めるまでになった。しかし、働きたいという女性の就業希望者はまだ300万人もいる。この人達にも働いてほしいと政府は考えている。

・日本の女性の就業率は上がっているが、先行したスウェーデン、英国に比べるとまだ低い。就業率が上がると、子供の出生率も上がるという相関がみられる。前向きに考えれば、女性が能力を発揮して働き易い環境を作るということは、子供を育てやすい状況も含んでいると考えられる。経済面だけではなく、社会環境面での整備が進んでいるとみることができる。その点で、日本はまだまだ遅れている。

・働き方をみると、若い時に正規の社員になったとしても、40代まで正規社員を続ける人は減っていき、パート・アルバイトのウエイトが上がってくる。一度仕事をやめざるをえない状況がある。

・女性管理職(課長以上)の比率も少しずつ上がっているが、まだ8.7%と10%に届かない。フィリピン47%、米国44%、スウェーデン37%、米国35%に比べて著しく低い。なぜ管理職比率は低いか。1)そもそも女性の正社員採用が少ない、2)配属にも偏りがある、3)出産で退職する人が多い、という理由が上がってくる。出産退社が少し減りつつあるといっても、まだ40~50%は育児に専念する。仕事との両立が難しいからである。

・一方で、仕事にやりがいを持っている人は、仕事を続けたいと考えている。そのためには働き続ける環境が必要であり、最大の制約はフレキシブルな時間対応ができないことにある。

・日本は長時間労働の国である。改善のためのルールはいろいろできているが、習慣として、会社にいる時間は長いし、時間外のインフォーマルな付き合いも、会社人間的な要素が強い。ここに入っていないと、十分なコミュニケーションができず、疎外感を持ってしまう人も多い。

・昇進を望まない女性も多い。女性がなぜ望まないのか。その理由は、①仕事と子育ての両立が困難、②管理職に手本となる先輩同僚がいない、③そもそもそれを支える仕組みが会社にも社会にも十分ない、という点にある。

・このようにみてくると、女性活躍の壁は、1)そもそも女性を採っていない、2)女性を育てていない、3)仕事が続けられない、4)昇進したいと思えないという点にある、と厚生労働省の安部充雇用均等政策課長はいう。

・長時間労働の克服が必要であり、男女の役割分担も見直していく必要がある。女性の視点が最も重要であるが、男子の視点で見直すべきことも多い。

・なぜ長時間労働なのか。工場などの現場作業であれば、労働時間は定まっており、残業時間もはっきりする。しかし、研究開発、生産設計、本社企画、営業販売となると、仕事を時間で測ることが難しくなる。

・打ち合わせや会議で合意をとりつけ、チームで動いていくには十分なコミュニケーションが必要で、そのための時間が不規則に必要になる。それでは、男子といえども速やかに仕事を終われないし、女性はとてもじゃないが付き合いきれないと思ってしまう。

・海外ではどうか。体験的にいうと、欧米の証券会社で6時をすぎると、社員はほとんど残っていない。欧米の監査法人でも6時をすぎると、人はほとんどいない。夜は速やかに家に帰って、8時から家族で夕食をとるというのが基本である。その後、男女ともに必要に応じて持ち帰った仕事を整理することは普通にある。

・生活習慣はなかなか変えられない。昔禁煙をする時、医者に聞いたことがある。どうすれば禁煙できるのか。医者いわく、たばこを吸いたくなる前の動作をやめればよいと。お酒を飲むと吸いたくなる、酒をやめろ。ご飯を食べると食後の一服がほしくなる、飯を食うな。朝起きると吸いたくなる、朝起きるな。いずれも無理難題である。

・でも、35歳でたばこをやめた。なぜできたか。ヘビースモーカーでのどが痛くなり、医者にいったら、のどがあれている、このままでは癌になって死ぬ、と言われた。それでやめることにした。何らかのショック療法が必要である。

・フランスにいる時、証券会社のフランス人は6時すぎには帰ってしまう。残っているのは日本からの派遣正社員のみ。8~9時まで仕事をして、それから飲み会に出かける。飲み会でも仕事の話が中心である。家につくのは11時~12時。翌朝、会社は9時始業というのに、日本人だけとりわけ早くきている。

・でも、何か特別な日は、その日本人でも定時に帰る。仕事のやり方をそのように仕組んでいけば、何とかなる。

・かつての働き方で偉くなった男性管理職にもかわってもらう必要がある。成功体験をそのまま会社のカルチャーにしてもらっては困る。かといって、働き方を変えて、会社の業績が悪くなるようでは話にならない。

・4月から施行となった「女性活躍推進法」では、1)会社は女性の比率、女性の働きをきちんと把握せよ、2)女性が活躍できるように中期的な行動計画を作り、目標数値を定めよ、3)それを社内外に公表せよ、としている。

・そして、4)それをクリアした企業には認定の印として「えるぼし」(1つ星、2つ星、3つ星)を与えるので、その印を商品などに使ってアピールしてよい。

・えるぼしをとると、政府は公共調達で有利になるように配慮する。新卒の採用に当たっては、学生からの評価が高まることも期待される。現在126社がえるぼしの認定をとっており、89社が3つ星である。

・現在は従業員301人以上の大企業が対象である。300人以下の中堅中小企業にはまだ努力目標であるが、いずれ下までおりてくるようになろう。

・働き方の改革が進もうとしている。在宅勤務、ITの活用、定時退社の徹底、フレキシブルな勤務体制作りなどである。人は時間で働くのではない。同じ時間で、どれだけ付加価値を高められるか。この生産性革命を実現する企業が伸びていく。

・そういう働き易い会社で、女性はもちろん、男性も働きたいと思う。個人としては「毎日が記念日なら」という思いで、時間を作るように意識革命を実践したい。

 

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