NTT~グローバル企業への転換を目指す

2016/03/23

・直近の時価総額のランキングをみると、1位トヨタ20.4兆円、2位NTTドコモ10.6兆円、3位NTT 10.5兆円、4位JT 9.1兆円と続く。通信ではKDDI 5位8.4兆円、ソフトバンク8位6.7兆円。NTTグループのNTTデータは73位1.6兆円である。国有企業が民営化したという点では、NTTやJTのほかに,日本郵政7位6.8兆円、ゆうちょ銀行9位6.4兆円、JR東海17位4.1兆円、JR東日本18位4.0兆円などがある。

・NTTはこれからどのように成長していくのか。2月に開催された個人投資家説明会に参加してみた。澤田純副社長のプレゼンは冴えており、明解であった。澤田氏はCFO(最高財務責任者)であり、CIO(最高情報責任者)も兼務している。CFOとCIOを兼務して本当に大丈夫かと外国人投資家に聞かれるようだが、本人は技術系出身であり、さほど気にしていない。

・60分のうち、30分がプレゼン、30分がQ&Aであった。いいバランスである。個人投資家からの質問は、1)固定電話はこれからどうなるのか、2)親子上場は将来どういう形にもっていくのか、3)これからの設備投資はどこに重点をおくのか、4)NTTの技術革新はどのように展開するのか、など的を射たものが次々と出された。少しまとまらない質問者の意図も正確に理解し、本音で率直に答えており、うまいと感じた。

・NTTの株主構成をみると、2015年3月末で政府が32.5%を所有し、次に外国人27.5%、金融機関16.4%、個人15.5%であった。この個人投資家の比率を上げたいと考え、投資家向け説明会に力を入れている。

・投資環境では、中国や新興国経済が懸念され、原油安や資源安が加速し、中東情勢など地政学的リスクが高まる中で、NTT株のパフォーマンスは相対的にしっかりしている。2015年は時価総額上位200社の中で、NTTの株価上昇率は51.2%とトップであった。

・NTTグループは、NTTを持株会社として、その下に4つの事業領域、6つの主力企業を抱えている。①地域通信事業ではNTT東日本とNTT西日本、②移動通信事業でNTTドコモ、③長距離・国際通信事業でNTTコミュニケーションと買収したディメンションデータ、④データ通信事業でNTTデータがある。このうち、NTTドコモ(NTTの持株比率66.6%)とNTTデータ(同54.2%)が上場しており、親子上場に当たる。他はすべて100%子会社である。

・澤田副社長は、NTTはまだ国が株式の32.5%持っている会社で、経営の自由度に制限があるため、ドコモとデータの上場は現在の形で続けていくのが基本形であると説明した。両社は独立した経営は維持しつつも、近年は持株会社であるNTTのリーダーシップが従来に比べて高まっているという。

・2015年5月に、現在進行中の中期計画を発表した。2015年3月期の業績は、売上高11.1兆円、営業利益1.1兆円、ROE6.0%、EPS 237円、配当90円であった。これに対して、中期計画のKPI(重要経営指標)として、3年後の2018年3月期に、1)EPS 350円以上(営業利益1.4兆円)、2)海外営業利益15億ドル(120円換算で1800億円)、3)設備投資-2000億円(2015年3月期比)、4)コスト削減-6000億円(同)を掲げた。

・過去15年を振り返ると、音声の電話収入が7兆円から2兆円へ減少し、その一方でブロードハンド、グローバル、クラウド関連の売上高が増えている。海外売上高は2008年3月期に0.2兆円であったものが、2015年3月期で1.8兆円まで増えたが、これを2018年3月期には2.6兆円へ伸ばす計画である。

・海外部門の営業利益は、2015年3月期の800億円を、2018年3月期で1800億円に拡大する計画である。全社の営業利益に占める海外比率も7%から13%に高める方針である。そのために、M&Aには引き続き力を入れていく、2010年に3000億円弱で買収した南アのディメンションデータのマネジメント陣を活用して、グローバル展開を加速しようとしている。

・従業員は国内16.5万人に対して、海外は7.3万人である。事業マトリックスを、1)コンサルから保守、運用までを横軸に、2)インフラからアプリケーションまでを縦軸にして、グローバルにクラウドビジネスを推進する。

・国内のネットワーク事業では、ドコモの新料金、NTT東西のフレッツ光の卸サービスなどによって、サービスの充実とともにインフラコストの削減を図る。また、2020年に向けては、イマーシブテレプレゼンス(仮想空間一体型のシステム)、ターゲットマイク(特定音のクリア抽出)、アングルフリー物流検索など、新しいイノベーションをリード役にして、スポーツ、観光、ビジネスの分野で新しい感動や体験を提供する。こうしたサービスの創出も含めて、市場の拡大に力を入れていく。

・配当に関しては、配当性向35%ベースに、2016年3月期で110円と5期連続の増配を予定する。自社株買いも累計で2.8兆円ほど実施した。今後とも海外ビジネスがうまく拡大すると、キャッシュフローの拡大が見込めるので、増配余力も高まってこよう。マイナス金利下で、配当利回りも注目されよう。NTTグループの事業構造改革に期待したい。

株式会社日本ベル投資研究所
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