最後の10年をどう生きるか~ヘルシーエイジング

2016/03/09 <>

・あずさ監査法人の「成長企業倶楽部」で、武藤真祐氏の話を聴いた。武藤先生は、医師で医学博士、欧州有数のMBAを取得し、米国の医師と公認会計士の資格も有している。現在32歳であるが、日本の終末医療も含めて、超高齢化社会にICTで医療、介護、生活の革新的プラットフォークを構築しようと実践している。もの凄いパワーである。

・武藤先生は内科医でカテーテルを専門としてきた。宮内庁で陛下のプライマリードクターを務めた後、マッキンゼーで経営コンサルタントとして働き、自ら医療法人を立ち上げた。さらに、日本の制度の中では、イノベーションがスピードアップできないと、シンガポールでヘルスケアの法人をスタートさせた。

・私自身にとっても切実な問題提起がなされた。現在年間に110万人が亡くなっており、生まれる人より死ぬ人の方が多い。これがいずれ160万人~170万人に確実に増えてくる。アクティブシニアにも死は訪れる。110万人のうち、病院で亡くなる人が90万人、自宅で亡くなる人が20万人である。筆者が生まれた頃は80%が自宅で亡くなっており、1970年代後半に逆転した。

・人生、最後の10年は必ず助けが必要となる。健康寿命と本当の寿命には10年の差がある。この時をどう過ごすか、社会の仕組みとしてどう支えていくか、が最大のテーマである。100歳を過ぎても老後が不安だといって、1000万円持っていても使わない人がいる。6割の人は自宅で死にたいと思っているが、現実には病院に入院し、管がいっぱい付いてしまう。

・自宅で看取ることが難しい。なぜか。介護の負担が重いからである。家族は病院におく方が安心できる。在宅医療は2006年から制度化されているが、まだ不十分である。病院の医療費は高齢になるほど、ぐんとかかってくる。自宅の方が費用は安く済む。治療(キュア)とケアは異なる。治療の後には、必ずケア(気持ちも含む見守り)が必要である。

・ここにITは不可欠である。最も大事なことは情報共有で、事前事後の情報が共有できていればキュアとケアの効果が高まり、生産性を改善することができる。クリニックでも病院でも在宅でも、いかに待ち時間を少なくして、患者に接する時間を増やすか。分業と協業、情報の正確なインプットとアウトプット。ICTを活用した診断や音声による入出力、厳格なスケジュール管理など、さまざまな可能性はある。では、現実にできているかといえば、まだバラバラである。

・武藤先生は、看取りの「祐ホームクリニック」を運営し、こうした課題に対してイノベーションを起こそうと奮闘している。日本の制度や規制にはそれなりの意味があるとしても、制約になる場合が多い。そこでシンガポールの仲間と、自由診療の国で新しい試みに挑戦している。ここでのイノベーションを逆に日本に持ってくる、というリバースイノベーションを狙っている。

・武藤先生の問いは、「80歳の時に何をしていたいか」にある。このイメージの実現のためにヘルスケアがあるという。そのためにはデータが必要であり、ナビゲーション(案内・誘導)が必須である。いかに早めに重症化を予防するか。人々の迷いや、流されやすい習慣をサポートするか。ありたい姿へ導くようにアドバイスを行うか。個人に合ったナビゲーションが求められる。あるレベルまでは、ロボットによるリコメンデーションも有用ではないかと、武藤先生は指摘する。

・私のケースでいえば、つい面倒になって、これまでの習慣に流され易い。日々の小さな誘惑に惑わされて、酒量が多くなったりする。2カ月に1度のクリニック検査、3カ月に1度の歯のメンテナンス、年に1回の人間ドックなど、かかりつけの医療機関はいくつか持っている。一病息災を自認しながらも、医師にはもっとがんばれと注意を受けている。

・わが家には、もう1件のかかりつけがいる。それはPCクリニックで、ファミリーの5台のスマホ、5台のPCなど、ICT機器のハードやソフトをまとめて、みてもらっている。このサービスは、ITで困った時に実に頼りになる。

・では、命の次に大事なお金はどうか。ここに関しては30年の経験を活かして、趣味のアナリスト、趣味の投資家を実践している。紺屋の白袴や医者の不養生にならないように、気を引き締めて社会貢献に取り組み、ヘルシー エイジング ビジネスで活躍する企業を応援したい。

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