違いを認めるには
・株式投資では、とにかく違いを追求する。他社とどこが違うのか。そのユニークさはどこからくるのか。個性を活かして、独自の商品・サービスをどのように提供しているのか。それが世の中に受け入れられて、どのような価値を創っているのか。そして、儲けにつながっているか。
・ところが、ヒトはとかく同質性を求める。違いを嫌う。その典型がいじめであり、差別であろう。子供たちのいじめはタチが悪い。悪気はないというのが最悪である。すぐに同調してグルになり、特定の弱者をいじめる。
・これを直すにどうしたらよいか。自分が子供の頃は、いじめている子の大将をみて、まずは大将に実力行使をした。いじめをやめさせるように行動した。当然、先生には怒られる。でも許せなかった。
・企業という組織においても、固有の雰囲気がある。よい意味ではカルチャー(企業文化)というが、その負の側面として意図せざる差別感を内包していることもある。
・組織目的として、パフォーマンスを上げるのは当然である。営業や生産において、目標(ノルマ)が設定され、それを達成すべく全力で働けと言われる。そこに個人差が出る。キーとなる指標でみた時、できる人とできない人が歴然としてくる。
・この結果の違いをどうみるか。それは、そもそも能力の違いであるのか。十分訓練されていない差とみるのか。もともとの目標の設定の仕方がよくなかったことに起因するのか。
・昭和の雰囲気でいえば、とにかく稼げ、稼いだ人が早く昇進し、偉くなる。できない人はふるい落とされて、辞めていくのは仕方ない。こんな会社があった。当時、私はこんな会社では働きたくないと思った。
・逆に、みんな平等で、働いても働かなくても、評価に差が出ず、特定の人に気に入られた人が早く出世していく。こんな会社でも働きたくないと思った。
・リーダーは圧倒的に優秀である必要がある。組織をまとめて、ビジョンを具体的な戦略に落とし込んで、これを実行する人材を動かしていく。そこで働く人々には、各々役割がある。得手不得手もあろう。人の能力を活かして、組織全体のパワーを上げていく。人材の採用、育成のしくみが重要な競争力の源泉となっている。
・では、ニューロダイバーシティ(神経多様性)をどのように捉えるか。スチュワードシップ研究会で、人的資本経営に関するニューロダイバーシティについて、話を聴く機会があった。脳神経には一定のスタイルがあって、それから外れている人は普通ではない、とみられがちである。かといって、障碍者であると決めつけるのも短絡的である。
・偉いといわれる人は、どこか変人であった。変人であったからこそ、特異な能力を発揮した。坂本龍馬、リンカーン、チャーチル、ガンジーなど、今風にみると、何らかの精神的な障碍があったかもしれない。しかし、その障碍とみられる特異性が、別の能力として時代の変化の中で活かされた。
・イノベーターは変人であることが多い。一方、普通の組織人は同質的、同調的であって、人と違うこと、そこで目立つことを嫌う。おとなしくしていることをよしとしながら、仲間が集まると、そうでない人の悪口を言ってストレスを発散させている。よくある風景であろう。
・ニューロダイバーシティは、認知の多様性を認めることが基本である。能力差ではなく、特異なことの違いを原則とする。病気でないので診断する必要はない。正常、異常ではなく、互いに違いを認め合うことができるようにならなければならない。
・人は、同質を求めがちである。実はAIも同質化しやすい。確かに、世にある情報をAIが学習していくならば、そうなりかねない。同質とは何か。自分にとって都合のよい人を好むというのも、その表れかもしれない。
・では、嫌いな人とはどのように付き合うのか。付き合わなければよいが、多様性を認め、違いを認めるということは、一定の付き合いも必要である。ここには工夫がいる。必ずもう1人、人を入れることである。ワンクッションおいて、話をしていけば、客観性を保つことができよう。
・世に空気の読めない人はいる。気配りのできない人もいる。うまく対話のできない人がいる。しかし、それはすべて自分の主観からみたものである。そういうあなたも変な人である場合が多い。
・SNSの時代、筆者はネットで罵詈雑言をしゃべっている人が大嫌いである。もっと丁寧に自分の考え方を語ってほしい。
・障碍者には、1)普通のことができない、2)でも、特別なことができる、3)あるいは、特定のあることはできる、という面があろう。これを障碍とみるのではなく、ニューロダイバーシティ(神経多様性)とみていく。健康な人の普通のことができない、ではなく、できることにフォーカスして、その良さを活かすことにフォーカスする。
・その良さを活かせるかどうかが、マネジメントである。常識でものごとを判断せず、忖度してものごとを分かることを求めず、言動に十分注意して、相手が行動できる具体的な指示を出すことができるか。この資質が問われる。理解し、訓練を受けていないとできないかもしれない。
・子供の時に、障碍者の子供とクラスを同じにしてきたか。家庭で老人の世話をした経験があるか。社会体験として、障碍者施設で見聞を広めたことがあるか。今、働く会社に、そのようなカルチャーが醸成されているか。
・確かに、障碍者だけでなく、妊娠中、育児中、療養中、介護中など、健常者にも様々な場面が訪れる。障碍者手帳をもつ障碍者を、法定雇用率(2027年7月には2.7%となる予定)で雇えという話だけではない。
・引きこもりのタイプで、ITに優れた人材、定められたルーチンの仕事なら正確にできる人材、無口でコミュニケーションがうまくできなくても新しい設計を実行する人材など、身のまわりに多様な人材はいよう。
・実はニューロダイバーシティを分かって、大事にしている会社は、普通の社員の力を引き出すことにも長けている。多様性を義務としてみるのではなく、政治的要請と受け止めるだけではなく、人材を活かすしくみとして取り入れているか。それで生産性は上がり、企業価値が上がるなら、こんなにいいことはない。
・まずは、障碍者をどのように活用していますか、と上場企業に聞いてみたい。その次に、ニューロダイバーシティにどのように取り組んで成果を出そうとしていますか、と聞いてみたい。ここで、会社の個性が出てこよう。ニューロダイバーシティに一家言持つ会社を投資対象として検討したい。