アクティブ投資家として知りたいこと

2024/08/12 <>

・企業が投資家に分かってほしいことと、投資家が知りたいことには常にギャップがある。このギャップをいかに埋めていくか。投資家からみると、多くの他の投資家はすでに知っており、自分だけが知らないことなのか。自分が知りたいことは、みんなも知りたいはずであるが、会社サイドが十分開示していないことなのか。

・企業から見ると、そんなことは企業秘密で、競争優位を確保するために、投資家や株主であっても教えられないこともあろう。一方、多くの場合、投資家は企業の秘密を知りたいと言っているわけではない。企業価値を創り出す仕組みをもっとよく知りたいのである。

・企業価値を創り出す仕組みがビジネスモデル(BM)で、分かり易くいえば、中長期の金儲けの仕組みである。今どきの表現でいえば、企業のサステナビリティをいかに確保するか。財務情報だけでなく、非財務情報も含めて、会社の将来を分かり易く語ってほしい、ということになる。

・あえていえば、事業概況を丁寧に説明してほしいわけではない。もちろん会社の中身を知らなくては、投資はできないが、投資家はわが社のことを知らないから、まずはここを丁寧に説明してわかってほしい、という解説を長々と聞かされても退屈してしまう。

・将来を知りたいからといって、中期計画を説明されてもピンとこないことがある。その中期計画に魅力を感じないことも多い。なぜか。中期計画を通して、何を実現していくかという本質が伝わってこないからである。

・社長の人柄と覚悟を知りたい。会社の強みと次のイノベーションを知りたい。リスクマネジメントで最も心がけていることを知りたい。こうした項目について、会社の個性を絡めながら本音で語ってくれるなら共感がわいてくる。

・アクティブ投資家であるから、企業評価に当たってはESGインテグレーションを基本とする。1)経営者の経営力、2)企業の成長力、3)事業のリスクマネジメント、4)企業を支えるESG、の4つの軸から企業を評価していく。

・事業の推進に当たって、当然マーケティングリサーチがなされていよう。単なる市場調査ではなく、それを踏まえた自社の優位性を生み出す仮説と展望について、何らかの見通しを語ってほしい。長期ビジョンに留まらず、それを具体化していく道筋を知りたい。

・現在の製品やサービスについて、その価格は妥当なのか。顧客にとって安ければよい、高いと受け入れられないというレベルの話ではない。わが社はどのような価値を生み出して、それを提供しているのか。

・顧客はその商品やサービスを通して、次にどんな価値を見い出し、満足しているのか。バリューチェーンにおける位置づけを、何らかの形で理解したい。そこには、会社の主張があるはずである。

・プライシング戦略は秘密で開示できないと躊躇してしまうかもしれない。具体的な実行戦略にはふれなくてもよいが、価値をどのように価格に反映させるのか。その配分については考え方を知りたい。別の見方でいえば、もっと値上げをしたら何が起きるのか。現在の製品・サービスのプライシングだけでなく、次の主力分野についても、その方向性が知りたい。

・事業のポートフォリオを見直してほしい、と外部の投資家はよくいう。当然である。将来を見通して、収益性と成長性の低い領域から高い領域へシフトしていくのは当然の経営である。当たり前のことはスピーディにやってほしいと思う。

・ところが、経営の執行サイドは2つの点で同意しない。1つは、方向はその通りだが、迅速を求めるとフリクション(摩擦)が大きいので、タイミングを図りながらじっくり手を打っていくという。

・もう1つは、今は低収益でも、今後やりようによって収益性を高め、場合によっては成長させることもできるとみている。それなら本気で実行してほしいが、甘い期待だけで現場に任せていることも多い。

・新製品・新サービスの開発には時間がかかるのも事実である。中期計画を3~5年で立てているが、技術開発だけで5年を要するという案件もあろう。それは否定しないので、開発戦略、投資戦略のフレームワークははっきりさせてほしい。

・キャッシュを余らせないでほしい。もっと投資をしてほしい。そのためのファイナンスに大いに力を入れてほしい。デットかエクイティか、財務戦略を明確に語ってくれることが企業への信頼性を高める。

・「資本コストと株価意識した経営」は当然のことであり、価値創造のストーリーをしっかり固めてほしい。投資家とのエンゲージメント(建設的な対話)がうまくいっていないとすれば、どこに原因があるのか。投資家が知りたいことを、企業家である経営陣は分かってほしい。

・但し、すぐにできることとできないことはある。また、そもそも無理な要求もあろう。対話をしながら、投資家のニーズを仕分けして、経営判断に活かしていってほしい。ここを相手に分かってもらわないと、経営者として適任でないとみられてしまう。

・投資家説明会でも、個別面談でも、株主総会でも、対話がはずむ経営者はすばらしい。ああ、いい質問をするな。その答えが、なるほどうまい。本音で丁寧に話してくれる。説得力があると同時に、納得できる。こういう会社に継続投資しながらポートフリオを作って、投資を楽しみたい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。