グローバル企業への飛躍はいかに

2023/07/05

・日本の時価総額上位企業をみると、それぞれ個性はあるが、世界でどこまで戦っていけるのだろうか。日本モデルは世界で通用するのか。あるいは、世界で通用するビジネスモデルに昇華しているのか。

・トヨタ自動車はどうか。自動車に代表されるモノづくりは、もはやそれだけでは戦えない。かつて、安くていいものを作って輸出する時代には日本の花形産業であったが、現地生産でいいものを作る局面を経て、EV時代のイノベーション競争に入っている。

・画期的なバッテリーが勝負となる。車ではなく、モビリティを担う新たな社会システム創りにコミットしなければ存続できない。トヨタの市場評価は、現在PBR1.1倍=ROE9.1%×PER12.3倍というレベル、これからの挑戦が興味深い。

・ソフトバンク・グループ(SBG)はどうか。孫氏は、PCソフトの卸売から始めて、ボーダフォンを買収、その後2016年にアームを買収し、2018年にビジョンファンド(VF)を設定した。情報革命の資本家として、投資持株会社を運営している。

・孫氏の戦略についていけない投資家も多い。通常は事業家としてのオーナーであるが、彼は資本家としての役割を強調する。AI革命をリードすべく、AI関連企業にグローバルに投資している。

・日本の総合商社は、事業投資をベースに商社活動を行っているが、SBGはVFをベースに、AIのグローバルポートフォリオで中長期の価値創造を図っていく。ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハザウェイも投資会社であるが、リスク・リターンのとり方が全く違うように見える。

・何が違うのか。見えている世界が違うように思える。バフェット氏は、自らが理解できるものに投資せよ、と強調する。バフェット氏に見えて、投資家に見えないことがある。

・同じように、AIの世界の将来展望が、イノベーターの孫氏には見えても、多くの投資家には見えないともいえる。先端AIへの投資は一見無謀にみえるが、彼にとっては結構確実な投資なのであろう。

・SBGでは、企業価値をNAV(時価純資産)でみる。これは、保有株式の時価から負債を引いた正味の時価である。同時に、企業の安全度は、LTV(負債比率:純負債/保有時価)でみる。SBGの場合は、LTVは25%以下に保つことを基本方針とする。

・NAV(時価純資産)に比べて、SBGの株式時価は常に下回っている。このギャップは、どこに由来するのか。ポートフォリオの時価純資産が適正に評価されていないのか。株式の時価がそれを反映できないのか。投資家のリスク嗜好に何らかの合致しないところがある。

・通常、これがコングロマリットディスカウントといわれるが、このギャップを埋めるべく、経営者は投資家と真剣に対話していく。

・NTTはどうか。グループの再編を進めている。NTTドコモを未上場にして、グループ直轄とした。グローバルビジネスの主力を、NTTデータに集約した。NTTの島田社長は、2022年6月に就任した。NTTを、コミュニケーションをつなぐ会社から、データをつなぐ会社へ変貌させていく、と語る。

・社長としてやるべきことを、3つあげている。第1は、CXをEXで実現する。つまり、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客の体験)価値を、社員がワクワク働ける仕組みを作ることによって、つまりエンプロイーエクスペリエンス(EX)の向上を通して実践する。

・第2は、IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)構想を具体的に実行する。IOWNの開発を進めながら。まずはIOWN 1.0(3月に公表)で、データの大容量化への対応と、データ伝送の低遅延を図る。1.0では遅延を1/200にする。こうなると、例えば遠隔医療において120㎞離れていても、違和感なしに手術支援ロボットが使えるという。

・カギは光電デバイスにあり、光半導体を米国はじめ世界中で使ってもらえるようにもっていく。この光電融合デバイスで、電力消費効率を2025年で13倍、2030年には100倍に上げていくことを目指す。

・これによって、情報通信分野のエネルギー消費を大幅に節約することができる。さらに、NTTグループでは、2040年までに、使用エネルギーの50%を再生エネルギーで賄えるようにもっていく方針である。

・サステナブル社会の実現に向けて、例えば、1)食料、水などのインフラ作り、2)ドローンの活用によるインフラの点検や作業のサポートを行い、3)パブリックセーフティのための監視コントロールシステムを普及し、4)過疎地でのAI運行バスの実用化、5)ヘルスケアにおける医療データの活用、6)グリーンエネルギーの活用に向けたスマートエネルギーシステムの開発などに取り組んでいく。

・そのためのネットワーク、データセンター、システムインテグレータなど、どのレイヤー(階層)においても対応できるようにする。とりわけ、NTTデータのソフト開発力を活かして、世界へ進出していくと展望を語った。

・東証の市場再編を踏まえ、時価総額上位150社の中から、グローバルに打って出て、これから時価総額を10倍にするような企業が何社出てくるのか、大いに期待したい。

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