ワークライフ・インテグレーションに向けて

2023/03/27

・新しい動きが始まっている。昨年視聴した経営者の話をいくつか取り上げてみたい。

・Web3で世の中はどうかわるのか。新しい資本主義にどんなインパクトを与えるのか。資本主義による格差拡大は、豊かさを実感できない人々にとってネガティブである。民主主義でなくても国力が高まっている国々がある。いかに共存していくのか。対立ばかりが目立つようになっている。

・Web1では、メールを見ることができ、検索が便利になった。Web2では、SNSに書き込むことができるようになり、ECで買い物ができるようになった。Web3ではメタバースが広がり、クリプトアセット(暗号資産)でNFTを所有できるようになる。Web2では、GAFAMが世界を席巻したが、Web3では新しいプラットフォーム企業が台頭してきそうである。

・企業経営に求められるのは、新しいスタイルである。ステイクテクノロジーズの渡辺創太CEOは、Web2で日本企業はかなり敗退したが、Web3では、いきなり世界に打って出る気概が必要であると強調する。

・スーツでマラソンは無理、ランニングシューズを履いて世界で勝負する。世界で通用するところをみせて、日本に帰ってくるような展開を図るべしという。そのためには、自立分散型の組織(DAO)でないとフレキシブルに動けない。株式会社が最適かどうかも問われると指摘する。

・リッポーカラワチのジョン・リアディCEOは、インドネシア経済の勢いを強調する。イスラム教の国だが、民主的な動きをみせて、過激さをコントロールしている。独立100周年の2045年には先進国の仲間に入ろうとしている。人口は2.8億人、平均年齢29歳(日本は48歳)、多くの人々が、生活がよくなっていると初めて実感している。

・今は企業家精神が溢れており、スタートアップが続々と登場している。消費者はどんどん変化している。リッポーは現在、商社と不動産ビジネスを軸にする。日本企業は長期的コミットメントで貢献するならば、ビジネス機会(オポチュニティ)はいくらでもあると語った。

・グラブ(Grab)の共同創業者タン・フイリン氏は、コロナ禍を経て、東南アジアのデジタルトレンドが一気に進んだとみている。5年分が2年で進んだ。経済・社会の不平等、ギャップをスマホが解決してくれる。

・SME(中小型企業)が国全体の97%を占めるので、彼らへのサービスがカギを握る。グラブは、ここにフォーカスする。東南アジアのスーパーアプリとして、ユーザー、カスタマーの経験を磨いていくと強調した。

・日本の経営者はどうか。日本IBMの山口社長は、「ワクを超えて」と社員に語っている。2019年に社長に就任したが、会社が明るくなったという。なぜか。自分が社長として、何を考えているか、何でも話すようにした。これが社員に安心感を与えている。社長が何を考えているかが分かれば、信頼できる。

・社長が日本人で、SE出身である。時代はDX、マーケットはアメーバのように変化している。今までのやり方ではついていけない。同調や経験依存では対応できない。これまでのIBMは、ロール(役割)とリスポンシビリティ(責任)を重視して、これをやるべしと指示してきた。

・もっといろいろやりたいのに、それができない。顧客をみていない。もっとワクを超えていく必要がある。DXは経営のためにある。ここが本筋である。「~と本社が言っている」ときくと、山口社長はカチンときたという。では、「あなたはどうしたいのか」、自分で考えよ、自分で提案せよ、その方が楽しいはずであると考えた。

・リーダーシップは透明性と公平性にある。外国企業だから、外人だから、日本人だからというアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)にとらわれてはならない。多様性とは、様々な意見を取り入れて、イノベーションを起こし、社会の使命を果たすことにある。

・リスキリング(再教育)は、今までのスキルを否定するのではない。守るべきスキル、変えるスキルを見極めて、絶えず勉強しなおしていく。社長自らAIをリスキリングし、量子コンピュータを勉強しているという。

・テクノロジーは冷たくない。あたたかいテクノロジーで、新しい事業をクリエイトしていきたいと語った。

・星野リゾートの星野氏は、これからの旅は、スモールマスになると強調した。昔の団体旅行が個人旅行に変わった。マイクロツーリズムが主流となった。この20年、さまざまな個人の旅が広がってきたが、ここにきて修正が必要になっているという。

・リゾートは、開発、所有、運営という役割分担があるが、星野リゾートは運営のみに特化してきた。そのため、オーナー(投資家)とつき合う必要があった。常に成長のスピードが求められ、借金をしないことが原則であった。

・現在は、新規開発してリートにもっていくことも多い。前工程はファンドが担い、エグジットはリートへ、星野氏は運営に責任をもつ。そこでは、働く人々の自立的アイディアとサービスが最も重要である。

・人々は自分のニーズに合った旅を選びたい。BEB(ベブ)は「居酒屋以上旅未満」の施設で、みんなでルーズに過ごすホテルがコンセプトである。

・ペットと一緒に過ごせる施設もスモールマスである。5785万世帯の10%にペットがいる。スモールな特殊なニーズであるが、565万世帯というマスである。犬は、もはや番犬でなく、愛玩犬であり、家族である。一緒に行って楽しく過ごしたい。ドックランと露天風呂が双方ともあるという施設がうける。

・北海道のコンビニ、セイコーマートは道民に愛されている。カード会員も500万人ほどいる。このセコマカードと連携して、星野リゾートを使うとポイントがつくようにした。なぜか。道内の旅行は、道内の人々が動いている。本州などから来る人々よりも多い。ここに確固たるスモールマスがある。

・若者は、ダイナミックプライシングを好まない。この層もスモールマスである。価格が需給で変動するという今の動きに対して、いわば価格コンシャスは嫌という世代である。BEBは価格をフィックスしており、これがうけている。

・富裕層はどうか。実は富裕層というセグメントはないという。お金を持っているという概念は危険で、そこで何を狙うのかを特定していないと意味がない。セグメントというのは、同じニーズがベースである。

・今からインバウンドが戻ってこようが、コロナ前のピーク時でもインバウンドは全体の15%であった。85%は日本人の国内旅行である。しかし、2025年以降団塊の世代が後期高齢者となり、旅行が次第に無理になってくる。一方で、20代の旅行参加率が減っている。ここが目の付け所で、若者の国内旅行にフォーカスしたいと語る。ここもスモールマスになろう。

・このように、経営スタイルの変容、Web3のインパクト、新市場の創出など、まさにワークライフ・インテグレーションが次のビジネスとなろう。そのための人材育成、新たな投資機会の台頭に注目したい。

株式会社日本ベル投資研究所
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