サステナブルファイナンスへのパラダイムシフト

2023/02/02

・昨年10月に、東京サステナブルファイナンスフォーラムが開催された。気候変動などの社会的課題へ対応し、サステナブルな社会を作っていくには、そのための投資が必要となる。その資金調達をいかに実行するか。

・そのためには、サステナブルファイナンス(SF)の新しい仕組みを構築することが求められる。東京はこれを担う国際金融都市になることを目指している。

・地政学的リスクが高まり、ウクライナ紛争は長引きそうである。長引くにつれて、数百万人規模の犠牲者が出てくる可能性もある。戦争は仁義なき戦いである。何とか停戦を図る必要がある。

・コロナパンデミックはすでに日常化してきた。つまり、社会の耐性が高まってきたので、予防、治療を含めて、経済活動が確保できるようになっている。それでも、国によってはワクチンが行き渡っていない。ここでも格差が課題となっている。

・カーボンニュートラル(CN)を目指すには、莫大な投資を必要とする。EUは先行的に走ってきたが、ロシアからのエネルギー供給制約にどう対応するのか。

・ロシアへの制裁でウクライナを救いたい一方で、自分たちに必要なエネルギーはロシアからしっかり購入したい。そんなストーリーがうまくいくとは思えない。

・エネルギーを我慢すれば、生活水準は落ちてしまう。各国の人々にとっては、弱者ほど苦境に見舞われる。ウクライナを盾にした代理戦争には限界があろう。

・それでも中長期的にカーボンニュートラル(CN)は目指すべきである。とすれば、それを実現するための投資にファイナンスをつける必要がある。ファイナンスには必ず採算が伴う。投融資の資金は回収できるのか。金利は払ってもらえるのか。事業からの利益は投資に見合うのか。その信用は誰が分担していくのか。

・サステナブルファイナンス(SF)であるから、サステナブル課題に対応する案件に、優先的にファイナンスをつけて、その活動を促進させる。かといって、甘い条件で事業を推進し、元がとれなくなっては困る。

・インフラ事業として、長期の採算がみえないことも多い。そこで、国や国際機関が先行的に信用をつけ、それを呼び水にしていくことも必要である。実績の積み上げがないと、一定の信用は醸成されない。

・PRI(責任投資原則)のCEOであるD.アトキン氏は、“tell me”から“show me”へ、もっとESGの情報開示を進めてほしいと強調した。グリーンウォッシュ(見せかけのやったふり)をなくして、サステナビリティを支える本物のレポーティングが求められる。開示のあり方についても、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)において収斂が進もう。

・世界銀行財務局のA.ドール氏は、包括的アプローチを実践する。気候変動への対応に総合的に取り組み、CO2にシャドー価格を導入して具体的に評価していく。世銀が気候変動のナレッジバンクの役割を担って、途上国をサステナブルにしていく。グリーンボンドからスタートして、サステナブルディベロップメントへ広げていく。

・社会的課題に対して、いかにインパクトのある投資を行っていくか。サステナビリティ追求の1つの成果であるインパクトを、明示的に評価しようという動きも始まっている。

・投資家であるファンドマネージャーサイドでは、パフォーマンスをリスクとリターンという2次元ではなく、インパクトを加えた3次元で評価する必要性も高まっている。さらに、評価に当たって、3次元パフォーマンスをいかに一元化するか。ここの数量化も極めて重要である。

・ブリッジウォーターのサステナビリティCIOであるK.カーニオルタンブール氏は、このインパクトを、SGDsの17項目の目標と整合的に評価する手法の開発が重要である、と指摘する。

・サステナビリティの関するビッグデータを活用して、企業を評価する。しかも、世界の企業を同時に評価することを目指す。今は、足元のデータで現在の状況をみているが、今後は将来の姿を評価していきたいという。

・金融庁の中島長官は、サステナブルファイナンス(SF)はすでに実行の段階に入っており、とりわけGX(グリーントランスフォーメーション)においては、トランジションファイナンスが鍵を握る。ここが新しい資本主義の柱の1つであると強調する。

・企業の開示については、1)コーポレートガバナンスコード、2)TCFDの要請、3)有報における人的資本の開示などがリード役となる。市場機能の発揮では、1)ESG投資のプラットフォーム作り、2)ESG評価機関のガバナンスの確保や行動規範の順守が一定の役割を果たそう。

・金融機関にとっては、1)自らの機能を発揮し、2)ガバナンスを支援し、3)トランジションの遂行をビジネスチャンスとして、4)サステナビリティを追求することが使命となろう。

・ここで、本来の投資収益と社会貢献を、どのように両立していくのか。ソーシャルボンドの役割、インパクト投資の拡大策などについて、今後とも検討を進めていくと語った。

・伝統的ファイナンスモデルが、サステナビリティを取り込むことによって、新しいファイナンスモデルに変容していく。その時、サステナビリティファイナンス(SF)モデルは、従来のモデルの一部を代替するのか。大半を代替していくのか。SFモデルの台頭はまだ始まったばかりである。これからの発展と実践に注目しつつ、参加していきたい。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所   株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。

このページのトップへ