経営は変われるか~甘さはどこに

2023/01/04 <>

・何らかのニーズに対して、自らがサービスを提供する。それが金儲けであって、全く問題ない。顧客が求めるニーズは、必ず社会的な課題と結びついている。そこをしっかり定めないと、自らの存在の軸がぶれてしまう。軸がぶれるようでは長続きしない。

・提供するサービスは本当に独自なものなのか。新しさはどこにあるのか。顧客にとって意味ある満足度を感じてもらえるのか。

・似たような商品やサービスはいくらでもありそうだ。それでも、自社に引き付けるには他が真似できないイノベーション(仕組み革新)が必要である。

・イノベーションは、たまたま1つでは長続きしない。継続的に生み出していくことが求められる。創業者は真にイノベーターか。さらに、イノベーターが創業者一人ではなく、組織的なパワーをもっているのか。

・リスクをとってもっと挑戦せよ、と一般論でいわれても、いざファイナンス(資金調達)となると、誰もが慎重になる。銀行が資金提供に保守的であるのは当然であり、直接金融の証券会社やその先にいる株主や投資家はトラックレコード(実績)を重視する。

・少し尖がったことをやろうとすると、前に進まないことが多い。イノベーターにとっては、リスクはチャンスであり、今がその時と思える。しかし、周りにいるステークホールダーには無謀に見えるので、動きを抑えようとする。

・サポーターがいなければ、1人だけでは限界がある。人材が集まってくるか。ここが運命の分かれ道であろう。偶然と必然の出会いや結びつきが大きく作用する。

・すでに出来上がった上場企業においても、事態は同じである。企業としての良さや強みをもっているとしても、その輝きがピークアウトしていることも多い。パッとしないのである。よって、PBRが1.0を下回っているともいえよう。どうやったらもっと輝くようになるのだろうか。

・まずは現在の経営陣が、将来のビジネスモデル(価値創造の仕組み)の絵を描くことである。これが思い切って描けるか。現在の延長戦上を、匍匐前進するだけでは何の魅力も感じられない。

・次に、その将来のビジネスモデルを実現する上で、足らないリソースは何か。人財、資金、組織、パートナーなどさまざまな経営資源がありうる。

・経営陣の経営力は十分か。十分でないとすれば、マネジメントの陣容を入れ替えていく必要がある。内部からの登用に加えて、外部からのマネジメント人材のスカウトも今時は当たり前であろう。

・既存事業は、当面の「金のなる木」として十分なのか。次の成長分野への投資はできるのか。既存事業の再構築、ポートフォリオの入れ替え、新規事業への投資をどのようなスパンで進めるのか。緊急の3カ年なのか、中長期的に10年で進めるのか。

・変化を起こそうとすると、必ず人的な軋轢が生じる。まずは内部人材の対立が生じる。人材の登用・刷新に、感情はつきものである。リストラの妥当性が問われる。皆にいい顔はできないが、一人ひとりを大切に活かす道を考えていく必要はある。

・外部のステークホールダーの理解も重要である。経営陣の交代を誰がリードするのか。社外取締役を中心とする指名委員会が本当に機能するのか。多くの場合、無理であろう。

・コーポレートガバナンスは重要であり、一定の役割を担うことはできるが、企業変革のリード役になることは今のところかなり難しい。一部の不祥事が起こした企業や、グローバル経営を目指す先進企業が例外として存在するにとどまっている。

・では、外部から、経営にどのように関与していくのか。サステナビリティを支える仕組みがESGといわれるが、E(環境)とS(社会)については、何らかの倫理、法制、制度、ルールを社内に持ち込んで実践していく必要がある。その意味で、環境ガバナンスや、働き方ガバナンスが問われるので、Gはその上位にあると考えるべきであろう。

・エンゲージメントとアクティビスム、どちらも株主として経営に関与していくが、その行動は多様である。エンゲージメントは、株主としてマネジメントと対話し、議決権を行使し、何らかの意思表示をする。

・アクティビスムはもう少し過激で、1)日本の制度仕組みに改革を要求する。2)今の制度の中で思い切った手段を講じてくる、3)経営改革を引き出すことを狙いつつ、短期の株価パフォーマンスも重視する、という動きもみせている。

・欧米からみた時、日本の資本主義の甘さを突いた行動を示すともいえる。日本企業の収益性の低さ、資本効率の低さ、経営力の低さに、物申す。こうしたアクティビストの活動も今や当たり前になってきた。

・しっかり経営しなければ、大胆な改革を求められる。煩わしい嫌な投資家として忌避するだけでなく、それなりの論理で対抗し、確固たる実践と成果が求められる。

・企業価値を向上させる「よい経営」を見せてほしい。やり方は多様でよいが、ユニークであるべし。表面的なESG対応で形式を整えればよいというものではない。

・改めて日本企業には、「経営は変われるか」という問いが突きつけられている。まだ道半ばである。本物の改革に期待したい。

株式会社日本ベル投資研究所
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