デジ田で地方が楽しくなるか
・6月にデジタル田園都市国家構想(略称デジ田)のイベントを視聴してみた。うまくいくなら地方が楽しくなりそうである。都会に出て、毎日あくせく働く必要はない。地方に雇用機会が広がりそうである。カギはデジタル人材にある。デジタル人材が育って、地域のコンテンツを活かすことができれば、新しいエコシステムができそうである。
・全国どこでも誰でも便利に暮らせるようにする。地方への人の流れを創り出していく。地方にサテライトオフィスをどんどん作ってもらう。企業版ふるさと納税を大いに活用しよう。このような方針である。地方とのマッチング機会を多面的に作ろうとしている。
・デジタル田園都市国家構想担当の若宮大臣(当時)の話は冴えていた。デジタルと田園を結び付けると、これが新しい価値の源泉になる。地方、地域の不便、不安、不利を解消して、成長に結び付けようという構想である。
・そのためには、デジタルを活用して、公共交通ネットワークを作っていく必要がある。再生エネルギーを軸として、エネルギーネットワークも必要である。不足するデジタル人材を、2026年度末までに230万人育成していく計画である。
・どんな動きが想定されるか。ワーケーションでは、コミュニケーション、バケーション、イノベーションが問われる。働くことにストーリー出てくれば、単身赴任ではなく、地方定住が増えてこよう。一部にその動きが出始めている。
・地方にイノベーションの拠点ができれば、魅力ある人々が集まってくる。イノベーターが集積効果を生んでくる。公共交通はオンデマンド型にして、移動の自由は十分確保していく。
・デジタルデータの活用という点では、データ連携が重要である。自治体がバラバラで個別のフォーマットにこだわるようではうまくつながらない。医療や教育などに関わる個人情報が、プライバシーとセキュリティを守りながら活用される必要がある。幸い5Gが普及していくので、これにコンテンツを乗せていくことができれば大きく広がろう。
・デジタル人材といっても多様である。開発型の人材もいれば、サービス利用型の人材もいる。地方で、民間、公共、自治体など、現在各々の持ち場で働いている人が、デジタルを使いこなして、サービスの質を上げていく必要がある。誰でも使えるアプリにうまくつなげ、そのアプリを普及させるコーディネーターが必要になる。
・コロナショックで、リモートワークが一気に進んだ。一度慣れてしまうと、元には戻れない。一方で、リモートワークで生産性を上げ、新しいビジネスに結び付けていくには、仕事のやり方、働き方も、新しい仕組みにしていく必要がある。
・先進的な企業では、不本意な地方転勤がなくなる。ホームワーク、サテライトワークが当たり前で、本社への出勤は出張となる。
・しかし、現実の仕組みは古いものが多い。新しいことを夢みたいに語って、その一部だけをいいとこ取りしても、それは定着しない。つまり、サステナビリティがないことになってしまう。デジ田が一時のブーム的掛け声にならないように、大きな構想と共に、着実かつスピーディな実行が求められる。
・高齢者、障碍者は、本当に疎外されないのか。デジタルデバイトを無くすようなデジタルヘルパーが身の回りに必要である。一方で、リスキリングの機会が十分でないと、若者も取り残されてしまう。ゲームができて、スマホが普通に使いこなせれば、それで仕事ができるようにもっていくことが望まれる。
・かつては、鉄道や道路が地域格差縮小のインフラであったが、今ではデジタル活用のインフラが快適な生活の基盤となる。ユースケース(適用事例)を競っていくために、デジタル甲子園(Digi田甲子園)を開催する計画である。Web3の時代は、メタバースを活用して新しい発信がなされよう。
・個別企業でみると、例えば、PCデポは、「わが家のデジタルライフプランナー」になることを通して、ファミリーのデジタル化を推進しようとしている。これが地方、地域まで広がるにはデジタルヘルパーが必要となろう。
・チェンジは、「デジタル×ローカル×ソーシャル」にフォーカスして、パブリテック(公共分野のIT化)を軸に、地方創生に役立つ成長戦略を実践している。
・①デジタル(デジタル技術の活用)、②ローカル(地域のサステナビリティ)、③ソーシャル(社会的課題の解決)の重なる領域をスイートスポットとする。日本の生産性の向上と地方創生への貢献が、同社のSDGs、ESGである。
・実際、NEW-IT、パブリテックとも、人材投資や開発投資を大幅に先行させている。東京圏以外のローカルにデジタル化の恩恵を広め、地域課題の解決に貢献している。パブリテックのLoGoチャット、LoGoフォームなど、自治体向け共有アプリも成長軌道に入っている。さらに、自治体の再生エネルギー活用を推進する地域マイクログリッドモデルも横展開で件数を増加させていこう。SBIホールディングスとも連携を強化している。
・デジ田はどこまで進むか。メガトレンドを創ろうという方向は的確である。くれぐれも掛け声倒れにならないように、民間の力をうまく活用してほしい。デジ田をリードする企業に大いに注目したい。