ウェブスリーの台頭~何が新しいのか

2022/07/19 <>

・6月に日経新聞、総務省主催で、「世界デジタルサミット2022」が催された。いくつかのセッションを視聴してみた。全体のテーマはデジタルトラストであった。信頼できるネット社会を作るにはどうしたらよいのか。サイバーリスクにいかに手を打っていくか。

・PwCの大竹伸明CEOは、1)デジタルトラスト(DT)のマテリアリティ(重要課題)を特定せよ、2)その上でロバスト(頑健性)を求めるだけでなく、何が起きたとしてもレジリアントであるか、つまりすぐに回復できるかが問われる、と強調した。3)その遂行に当たって、CIOとは別に、CISO(最高情報セキュリティ責任者)を設けるべし、と提言した。

・インターネットは誰でも便利に使うようになったが、そこにはまだ差がある。デジタルデバイド(情報格差)が思わぬ不利益を招く。利便性を高めつつ遅れないように、さらに犯罪に巻き込まれないように、人々を守れるような社会を作っていく必要がある。

・ウェブスリー(Web3)が広がろうとしている。Web1.0がインターネットで何かを読むのに対して、Web2.0は自分も投稿して使うようになった。そして、Web3.0はネット上で何かを所有するようになる(岩瀬KLKTN CEO)。

・Web2はネットワーク効果がカギで、大手のGAFAが世界と席巻してきた。Web3は、ネットワーク効果に左右されずに、これに関わるステークホルダーにリターンを生むことができる。(オリフル WorkCo Japan 創業者)。

・Web2が中央集権的でデータセンター中心であるとすれば、Web3はネットワークが分散型で、トークンがそれを繋いでいくオーケストラ型である(松本マネックスグループCEO)。

・Web1がサーバーを使ってリードする(読む)ことであったとすると、Web2はモバイルやクラウドを使ってライトする(書く)ことができるようになった。そして、Web3は参加(ジョイン)して所有(OWN)することができる。

・クリプトアセット(暗号資産)やメタバース(超宇宙のようなネット上の新しい空間)が広がってくる。とすると、この先にWeb4やWeb5もありうる(伊藤デジタルガレージ共同創業者)。

・インターネットが登場した時よりは、Web3の将来について分かっている人は多い。しかし、フォロワーは何か危うさを感じる。人は自分が十分理解できないことに不安を感じるが、それが普及してみると便利に使っていることも多い。

・暗号資産は(クリプトアセット)は、通常の通貨ではない。今のお金(通貨)は、国がコントロールし、人々が信用しているので、価値の貯蔵や価値の交換に使われている。

・仮想通貨(クリプトトークン)は、現在の主権通貨のように中央でコントロールされないが、一定のエコシステムの中で、お金のように使われていく。このエコシステムが独自の領域を形成し、国を超え、これまでの法令を超えて、勝手に独自の空間(世界)を作っていく可能性がある。

・フィンテックは、既存の金融システムを新しいネットテクノロジーを使って、もっと便利にしていこうという流れである。NFT(ノンファンジブルトークン)は、何らかのデジタル資産を、代替がきかない確かなものとして、所有を特定していく。BC(ブロックチェーン)技術によって、非代替性のトークン(デジタル証印)を信用あるものにしていく。

・これによって、デジタル資産は勝手にコピーできず、所有権を明確にできる。ゲームに始まって、デジタルアート、デジタル漫画、デジタル投資、デジタルがもつステータスにも、所有者が特定できる。

・今、お金を家においたり、銀行に預けたり、株や不動産に投資してその証券(権利証)を持っているのと同じように、自分が何らかの価値をおくデジタル資産をクリプトアセットとして普通に所有でき、その価値を保有できる。

・その価値は、マーケットを通して評価されるので、価値が上がることもあれば下がることもある。取引すれば、別のクリプトアセットへ移ることもできる。これから10年も経てば誰にとっても当たり前の新しいアセット(資産)クラスになっている、という見方も有力である。

・株券はすでになくなったが、株式の権利は第3者の機関が安全性を保証している。株式は実際の企業のバランスシート上の価額に対する所有権を有する。上場企業であれば、マーケットでの取引を通して、現在の価値がたえず明示される。それを当たり前と思っている。

・こんなイメージと同じように、デジタル空間の中で、あらゆるプロセスが記録されて信用が構築されていくことになろう。今のお金の世界とは別の仮想空間で、トークンをベースにエコシステムができ上がっていく。

・そこでは、トークンに投資する人、トークンでファイナンスする人、トークンで新しい事業を始めサービスを提供する人、それを利用して楽しむ人々が出てくる。このエコシステムが動き出すと、今のリアルの世界とバーチャルな世界が2つあって、その相互のやり取りも発展してこよう。

・バーチャルな世界のガバナンスは、誰が担保するのか。それは参加者自身であるが、そこには何らかのルールが必要になろう。BCをベースにする分散型ネットは自己責任が原則としても、何か危ういことが起きては困る。

・日本はどのようなスタンスで、このイノベーションを支援していくのか。Web3で全く新しい変化が起きようとしている。既存の仕組みを守ろうとすると、このイノベーションに遅れをとろう。

・日本は、そうなる公算が社会の特性として高い。10年後に「しまった」とならないように、みんなで盛り立てていく必要があろう。新しい会社が古い会社に取って代わっても、その方が活気にあふれた未来が拓ける、というカルチャーをぜひ創っていきたいものである。

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